亘

めぐり逢わせのお弁当の亘のレビュー・感想・評価

めぐり逢わせのお弁当(2013年製作の映画)
3.5
ムンバイのダッパーワーラー(弁当配達)は各家庭の弁当を職場に届ける。その誤差は600万分の1という正確さだが、誤配送で主婦イラの弁当が赤の他人サージャンの元に届く。夫と不仲のイラと妻に先立たれ独り身のサージャン、どこか似た者同士の2人は文通を始める。

600万分の1の奇跡の出会いと2人のやり取りを描いた作品。とはいえ描き方的に奇跡感が薄い気がしたし2人のやり取り・結末も何か釈然としなくて、個人的にはあと一歩惜しい気がした。というわけでかなり個人的な否定的レビュー。

イラとサージャンは弁当箱の中に手紙を忍ばせ毎日1往復の文通を始める。初めは料理の評価をしてたけどいつしか悩み相談になり互いの身元を書いたりする。メールが普及した時代にあって手紙は非効率的に見えるけど毎日1回のイベントとして2人ともどこか楽しそう。互いに悩みがある者同士手紙のやり取りだけでも多少気が楽になったかもしれない。

とはいえ釈然としない点1つ目がシャイクの存在。シャイクはサージャンの部下のとにかく明るい男。寡黙なサージャンに軽いノリで話しかけるムードメーカーかと思いきや、財務資料をまな板に満員電車で野菜を切る(!!)し仕事はミスばかり。さらに悪びれずにサージャンを食事に呼び下手な料理を勧め、サージャンの退職を願うことを仄めかし、無賃乗車の告白。図々しいことこの上ないし、作品における役割は何かわからない。サージャンに影響与えて何か好転させたかといえば特にそうでもなく、登場時間長いわりによくわからなかった。

そしてニアミスと終わり方も釈然としなかった。2人で会う約束をして会えず、サージャンの躊躇はどこか『ラ・ラ・ランド』にも似てると思ったけど、どこかサージャンの身勝手な気がする。『ラ・ラ・ランド』では双方が将来を真剣に考えたうえで互いに思いをしまい込んでた。だからこそ最後のやるせなさ・切なさは分かった。でもサージャンは自分の老いに当日朝気付いてイラのことを考えて辞めたというのは独りよがりで身勝手に思う。そして2人は最後まですれ違ってしまう。確かに「もう少し早く相手に応えていれば」という余韻はあるけど、この結果は2人で出会おうとする努力を必死にしないでいた、消極的な諦めの結果に見えてしまった。個人的な意見としては日常に即していた見せ方が悪かったのかもしれない。2人が何とか出会おうとする姿とかを見せればより伝わったかなと思う。

インドの日常を知ることができたという点は好評価。

印象に残ったシーン:サージャンが昼休み前に弁当箱を開けようとするシーン。サージャンとシャイクが怒られるシーン。イラが旅立つシーン。
亘