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悪童日記のハターのレビュー・感想・評価

悪童日記(2013年製作の映画)
4.0
悪童【意味】いたずらっ子。悪がき。

何年か前に初めて小説を読んだ時、この邦題は秀逸だと思いました。冷静で頭の切れるわんぱく双子は、時にえらいこっちゃないたずらをするんですが、やったれやったれー!と応援したくなるんです。この悪童日記、ハンガリー出身の亡命作家アゴタ・クリストフの処女作で原題は『大きな帳面』。拙いフランス語で書かれた原作はまるで小説自体が日記のようでもあり、ストーリーとのリンク性を感じさせます。

舞台は戦争真っ只中の某国(恐らくWW2時代のブダペストと推測されているが、物語では明確にされてない)中流階級で育つ双子の男の子が疎開先として住まう事になったのは、田舎町のはずれにある魔女と呼ばれる女の家。ひん曲がった性格が災いして、周囲からは忌み嫌われる存在。この魔女というのは、双子の実の祖母だった。そんな意地悪婆さんの元でいたぶられながらの生活を強要される羽目になった双子は、この厳しい世界を生き抜く為にお互いを叱咤し鍛え合いながら直向きに生きる。性倒錯の将校を前にしても怯まず、我を持って生きる。知恵遅れの娘をエロ司祭がいたずらしてる事を知って、いたずら返しで成敗するかと思いきや脅迫して金を取るなど、元々お坊ちゃんの双子はたくましく生きる。

リアリティを感じさせながら、おとぎ話にも見える世界観を醸し出しているのは原作しかりですが、映像でそれを感じ取れるのは、キャスティングと監督の手筈の賜物でしょう。映像化されたあまたの印象的な演出も双子の人間性と境遇が自然と同情を誘ってくる。史実と童話が織り交ざる物語はその雰囲気を損なう事なく絶妙なバランスを保っていました。戦争がテーマでない戦争の映画とも言える出来上がり。原作好きとして満足いくものになっていたのは嬉しー!でした。
最後に、あの人間どっかん爆破劇の画には笑ったよね...。
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