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オマールの壁のpanpieのネタバレレビュー・内容・結末

オマールの壁(2013年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

先月に一度レンタルしていた今作は返却日に途中まで観て泣く泣く返した忘れられない作品だった。
どうしても観たくてGWに絶対に観ると決めていたのにも関わらず淵に立たされた状態があまりにも長く(笑)またもやギリギリになっだがやっと観る事が出来た。



オマールは今日も壁を登る。
恋人ナディアに会う為に。
ナディアはタレクの妹だ。
タレクとアムジャドは同志で幼馴染だ。

高さ8mの分離壁にはローブが一本ぶら下がっているだけで監視塔の一瞬の隙を突いて向こう側へ行かなければ銃殺されてしまう。
オマールは今日も危険を冒して愛するナディアに会いに行く。

アムジャドはオマールがナディアの事が好きだと分かっている。
ナディアもオマールを想っている事にもアムジャドは薄々気付いている。
何故ならアムジャドもナディアが好きだから。
オマールはナディアと結婚を考えていてタレクに時期をみて話すつもりだとアムジャドに打ち明ける。

今作は政治的な側面を持った映画だがそれよりもオマールとナディアの純愛を描いていると思った。
とてもプラトニックで観ているこちらが照れてしまう程。
こんな感情は忘れてしまっていたな。笑
会う度にこっそり手紙を渡して愛を確かめ合っている。
なんか昔の中学生みたい。笑
時々手を握ったりする程度の触れ合いでいつも二人は情熱的に見つめ合う。
観ている私が照れる程に情熱的に見つめ合っているのだ。
でもそんな二人が初々しくて応援して観ていた。
オマールはパン職人で真面目に働いてお金を貯めている。
愛するナディアと結婚する為に。

オマール達3人はある夜にイスラエル兵を狙撃する。
それで追われる羽目になるのだが。

そんなある日の事。
アムジャドがタレクとオマールと3人で食事中に「猿の捕まえ方」を話す。
まず猿に角砂糖を与え味を覚えさせる。
そして小さな穴を掘り角砂糖を仕掛ける。
角砂糖の味を覚えた猿はそれをまた食べたくて取ろうと穴に手を入れる。
ところが角砂糖を掴んだ拳は抜けない。
穴が小さ過ぎて角砂糖を握った手だと抜けないのだ。
猿を捉えようと人間が網を持って近づいて網を掛けられても猿は角砂糖を離さない。
この話が後々重要性を帯びてくる。

「秘密警察だ!逃げろ!」
オマールとタレク、アムジャドの3人は散り散りに逃げる。
何度も追われ劇中高所から飛び降りたり飛び移ったり凄い身体能力で兎に角走り回って逃げる。
他人の家の玄関から入って裏口から逃げたりもする。
道は迷路の様に入り組んでいて逃げる方も追いかける方も必死だ。
観ているこちらも息苦しい程だ。
オマールは囲まれて遂には捕まってしまう。

激しく殴られ拷問を受けるがオマールは一言も口を割らず独房に入れられる。
独房で目覚めると一匹の虫が。
オマールが虫に話しかけるこのシーンは彼が孤独に耐えている事がよく表れていた。

独房から大勢がいる所へ移されある日食事をしているとアリアクサ殉教団のイスマイルと名乗る男が接触して来るがオマールは「絶対自白はしない」と呟く。
後日取り調べを受けた際取調官があの時のイスマイルだった事に気付き録音されていた言葉を法廷は自白と捉えると脅迫し〝協力者〟になるなら罪に問われないと告げられる。
イスマイルことラミ捜査官はあの時絶対に何も話すなとまるでオマールに親切に注告したかの様に話したのにも関わらずそこからの録音て何?
暴力で屈しないオマールに今度は優しく接して心に入り込んだ。
汚いやり口。

その後弁護士から「軍事裁判では録音は自白として採用される。刑罰は最低でも懲役90年は下らない。打つ手は占領が続く限り何もない」と告げられ録音されてしまった事で八方塞がりだと知らされ呆然とする。
もはや逃げ延びる為には協力者になるしか手はないのだろうか?

ラミ捜査官の尋問は続く。
「恋人がいるだろう?
君達を一緒にしてやりたい。
だが協力者になる事を断れば
君の人生は地獄だ。
彼女の人生も」
何故ナディアの事まで知ってるのか?
カマをかけているだけ?
オマールがナディアの事を話した人物は一人だけ。
だがまだこの時点でオマールは猿が誰だか気付いてはいない。

「君はイスラエル兵を殺しては
いない。
犯人逮捕に必要なものを
くれさえすれば過去を忘れ
再出発のチャンスを与える。
タレクが犯人だ。
犯人を野放しにはしない。
何としても捕まえる。」
タレクが犯人?
いや、あの時撃ったのはアムジャドだ。
何故タレクが犯人と思っているのか?
ラミ捜査官の言葉に疑問が湧き上がる。

オマールは協力者にならずに済むのか?
愛するナディアと結婚する事が出来るのか?



観終わって何とも切なくてやり切れない思いが残って口の中に苦味が広がった。

パレスチナでは結婚前の女性が妊娠するなど以ての外で家族の恥と罵られ時には殺されてしまう事もあるそうだ。
そう言えば「灼熱の魂」でもナワルが子供を産んだ後土地から追放されていたっけ。
今作といっしょくたにしてはいけないのかな?
土地というより宗教によるものなのかな?
愛するナディアの幸せの為に身を引いたオマールに涙が出た。

オマールがもうイケメンすぎてツボだった。笑
その後レビューをしながらオマール見たさに何度観ただろう。笑
そしてアムジャドが「ゴッドファーザー」のドンコルレオーネのモノマネがそっくりで笑った。
顔がいい!笑
あとタレクの冗談が全然面白くないんだけど楽しそうに恥ずかしそうに話すタレクにも好感を持って観ていた。
タレクが生きていたらもしかしてラストは変わっていたのではないかと思った程タレクには生きていて欲しかった。

オマールが待ち伏せに失敗し再び捕らえられラミ捜査官と話している所に電話がかかってきてその相手と敵国の言葉で話すシーンはこんな酷い嫌な奴にも家族がいて娘の幼稚園の送り迎えを今は行けないからと母親に頼んでいる所に人間性を感じる事が出来る。
電話の後オマールが「何処でアラビア語を?アラブ人かと思った。」というセリフから分かる様にラミがアラブ人(パレスチナ人)ではないという事だ。
ではヘブライ語を話している所からイスラエル人もしくはユダヤ人なのか?
オマール達が狙ったのがイスラエル兵なのでオマール達はパレスチナ人だと思っていたがそれでいいのか?
うーん、こんがらかってきた。(もしかしてこれって方言?(゚д゚lll))
パレスチナ問題に疎いので何方か教えてください。m(_ _)m

猿の話はよく出来ていて後々重要味を帯びてくる。
会話の所々に猿が登場しそれを話すのはアムジャドだった。
アムジャドはオマールとは親しい中だが明らかにナディアはオマールに夢中でアムジャドも普通に勝てる見込みのない事を分かっている。
それをこんな形で手段を選ばず裏切りナディアを手に入れても誰も幸せにはならないと分かっていても人間は本来汚い生き物だ。
手に入らないものは金を払ってもどうしても欲しいと思うしましてや好きで好きで堪らない決して振り向いてくれない相手だ。
アムジャドはモノマネをしたりウードかな?楽器を弾くことも出来るしもしかしたら結婚して楽しい相手はアムジャドの方かもしれない。
まぁ、若い時は外見から入るのでオマールは私から見ても超イケメンだしナディアの気持ちも分からなくはないが既婚者としては今は楽しい相手の方が結婚相手には相応しいのではと思ってしまうけど。笑
でもアムジャドにはこういう一面があってオマールと違って信念もなく長いものに巻かれてしまう様な奴だったしなぁ。
やっぱり裏切らず一途なオマールだね!(*^^*)
カッコいいし!笑

アムジャドもきっとオマールの様に捕まってあっさり話してしまいラミ捜査官の罠から抜け出せなかったのだろう。
それも分かるがオマールの様に友達を裏切らず決して口を割らず敵をはめる為に嘘の情報を与える位の努力はしなかったのだろうか。
アムジャドに同情の余地はなく結婚後にオマールが真実を知ってラストに繋がるのだけどアムジャドには制裁を与えなかったのだろうかと不思議だったがナディアとその子供が不幸になると考えた末の決断に違いない。
結婚したくてしたくて必死にパンを焼き売上を帳簿に記入していた真剣にナディアを想っていたオマールが殺したい相手はアムジャドであった筈だがラミが餌を撒いてアムジャドを〝協力者〟に仕立てあげ「猿の捕まえ方」方式でアムジャドをはめ猿にしナディアと自分の仲を引き裂き一番許せなく死に値する相手と気付いたのだろう。


ネタバレレビューになってしまった。
自分の思う事や書きたい事がどうしてもネタバレに繋がってしまってそこを抜いたらただのあらすじ紹介で終わってしまいどうしてもネタバレになってしまった。

オマールとナディアは結ばれて欲しかった。
何ともやり切れない。
切なすぎる。
今作本当にあった話ではないがナディアが真実に気付かずにこのまま生きていって欲しいと切に思った。
彼女もあの時何故愛するオマールを疑ってしまったのか、それに怒ってオマールは自分をアムジャドと結婚させてしまったと思い込んでいるしそう思ってこれから先生きていくのは辛いけど真実は知らないで欲しいと願わずにはいられなかった。

簡単な事ではないがパレスチナ問題が早く解決され紛争のない愛し合っている者同士がが結ばれる事が当たり前になる事を願う。
panpie

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