爽快感というより、疾走感のある映画だと思った。高評価なのもよくわかる。
ストーリーはシンプルで、ほぼすべて予告編で明かされている。生活態度も精神も劣悪の独身女が、ボクシングに目覚めるという話。
みんなが書いている通り、まずもってバイト先（100円コンビニ）の醜悪さの描写がすごい。本作は、例えばトイレが汚いとかいった状況描写ではなくて、人間の行動や会話だけでその環境の凄まじい醜さを描いている。とにかく、あんな職場で働きたくない。
ラブホテルのシーンも「宮本から君へ」を思い出させるほど酷い。風邪をひいた主人公が男に作ってもらった料理を食べるシーンもさらに酷い。あんなに悲しい食事シーンを見たことがない。
本作はサクセスストーリーでもシンデレラストーリーでもないところがすばらしい。「リトルミスサンシャイン」と同じように、じつは主人公を取り巻く環境は最初から最後まで変わらない（むしろ悪化）。百円の恋が一億円の愛を生むはずもない。変わったのは、主人公がボクシングを始めたことだけだ。
ドブネズミの美しさは写真には写らないと甲本ヒロトが歌ってた。自分がたとえドブネズミでも全力で走るべきだ。
疾走する安藤サクラは、たしかに美しかった。
予告編でも聞こえる妹役の「立てよ！この負け犬！！」という台詞も本当によかった。
