るる

イントゥ・ザ・ウッズのるるのネタバレレビュー・内容・結末

イントゥ・ザ・ウッズ(2014年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

期待せずに見たからか、案外楽しめた。童話という寓話の体裁を借りた女たちの物語、大人の為の教訓話として見ると、なかなか面白いミュージカルだと感じた。ブラックさが足りなくて中途半端な気もするが、そのぶん、見やすかった。

前半は、不妊治療に奮闘する夫婦の寓話が主軸。

そこに、結婚に踏み切れない年頃の女シンデレラや、母親離れの時期を迎えた娘ラプンツェル、無邪気で残酷な少女赤ずきん、子を思うあまり空回る母親たちなどなどなど、様々な女たちの物語が絡んでくる。

後半は夫婦関係、親子関係、家族関係、そして、大切な人との別れへと焦点が当てられていく。

たくさんの童話が混ざりあった脚本にはニヤリとさせられた。映像演出にも童話オマージュ満載で、狼の腹の中に落ちていく少女の描写はアリス、腹の中で再会するふたりはピノキオを彷彿とさせるなど、気付けば楽しさ二割増。

ただ、女たちのたくましさ、したたかさに比べ、男たちが軒並み魅力に乏しいのが、いかにも、ここ最近のディズニー映画という感じで、少々物足りなかった。

また、正直、歌の演出は、どうせなら舞台で観たいなと思うシーンが多かった。どの歌も悪くはないのだが、曲調が似通っているので、これといったナンバーがないように感じて、魅力に欠けるといえば、そう。各キャラクターによる忙しない掛け合いは楽しかったが。

森の中で様々なキャラクター達が騒動と愛憎劇を繰り広げる様子は、シェイクスピアの『真夏の夜の夢』のよう。

魔女大活躍。しかし、前半は特に、特殊効果が雑なことも相まって、メリル・ストリープになにをやらせてんだ、という感じ。

ジョニー・デップ演ずる狼が正しく赤ずきんを付け狙う変態男の暗喩になっており、ロリコンかつ熟女好きという妖しげな魅力を放っていたが、早々に退場してしまい、拍子抜け。

シンデレラは確かに原作では三日三晩続く舞踏会に出席していたように思うが、何回逃げるんだと苦笑してしまった。彼女の身に起こる奇跡がいちいち唐突なのも、なんだかなあ。鳥と喋れるのはやはりこの世界でもビックリポイントなのか。

舞台で観れば、一夜終わるごとに拍手喝采の第一幕なのだろうが、思ったよりアッサリ終わってしまった印象。

夫を殺されて嘆き悲しむ女巨人が登場する第二幕からは、一気に先が読めない展開になって、メリル・ストリープも本領発揮し始めて、ぐっと面白くなった。

ラプンツェルのカップルは、もう少し見守らせてほしかった気がする。

しかし結末は予想外。

王子がクソすぎるし、パン屋の妻は何、浮気の罰? 子を放ったらかしにした罰? それとも王子に性病でもうつされた? あれ絶対キスだけじゃなかったろ。

ジャックの母にしても、魔女の最期にしても、女巨人にしても、童話の定番とはいえ、自滅する母親たちの姿に絶句。母親が死ぬことで美化されるというのは…どうなのよ。

ただし、この手の物語で、母娘の関係への言及の他に、男親の責任について言及し、教え諭すような展開は新鮮だった。

ミュージカルらしいミュージカルの構成で、DVDで見るぶんには悪くなかったです。しかし、あくまで寓話として見るべきかと。
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