emily

岸辺の旅のemilyのレビュー・感想・評価

岸辺の旅(2015年製作の映画)
3.9
夫のゆうすけは3年前に失踪したままかえってこない。瑞希はピアノ講師の仕事をしているが、ずっと喪失感を抱えたまま生きていた。ある日夫が突然戻ってくる。しかしすでに死んでいるという。ゆうすけにお世話になった人へのお礼をかねて見せたい物があるというので、奇妙な二人の旅が始まる。初老の新聞配達員や、食堂の夫婦、山奥の家族など、今までお世話になった人達と出会い始めてゆうすけの違う一面を見ることになる。

3年ぶりに戻ってきたゆうすけはなんと”幽霊”になっていた。ただ”幽霊”と言ってもここでのあっちの人達は生きてる人と全く同じ。一度死を迎えて、本当の意味で採算して死に向かっていく。生と死の境界線があるようで、今作ではない。

それは人は死んだあとでも、その人の記憶が生き続けるとともに、死んでから知ることもたくさんあるのだ。
亡くなった後も記憶だけでなく、徐々にいろんなことがわかってきて、それはまるで共に生きてるような感覚に陥る。
死んだ後本当にその人の価値や、人間味がわかることが多い。
その部分を繊細に描写されていて、旅という形で知っていく

幽霊との旅は、亡くなった方を知る、さらには死を理解して前に進むための時間。
そうしてその人は心の中で記憶としてずっと生き続ける。

スパイスだったり、ホラー的に死を知らせてくれる部分だったり、ただ美しいだけではなく、コメディ要素もあり淡々とした中に独自のリズム感があり、夫婦間の微妙な心境の変化がしっかり描かれていて、ひきこまれました。
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