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レヴェナント:蘇えりし者のemilyのレビュー・感想・評価

レヴェナント:蘇えりし者(2015年製作の映画)
4.1
実話に基づくマイケル・パンクの小説を元に、熊に襲われ重傷を負い、荒野に一人残されたグラス。愛する息子を奪われた男が、復讐心を胸に、生き延びていくヒューマンドラマ。

冒頭から熊にグラスが襲われるシーン。口が塞がらなくなるくらいの迫力で、冷たくも自然光だけの映像が肌に突き刺す痛みを煽ります。

グラスの息がカメラにかかったり、終始息遣いや、木のミシミシ音が響き渡り、特徴的な効果音のドーンって音が時折鳴り響く。川が流れて、日々が過ぎ、壮大な景色の中にただ一人取り残された男が生き抜いていく。

復讐に燃える男の物語だか、それよりも深いところに生きる。と言う深いテーマがある。生きるために、ただ息をし続ける。終始聞こえるグラスの息遣いがまだ生きてる事をしっかりと観客に示してくる。

観客でありながら、その場にいるような、その場にいながら何もできないような、痛みを感じ、凍る寒さを感じ、ただ彼が生きてることに安堵し、同じように息をする。正直疲れる映画である。瞬きも油断も許されない。映画を見てる感覚ではなかった。
そこに、居る感覚だった。カメラ越しの壁すら感じなかった。息が、血が顔に降りかかる気がした。

静かなる音楽の効果も絶大で、息づかいとともにリズムが打たれる感覚。実際エンディングには息づかいがかすかに聞こえていた。息づかいに合わせてわたしも呼吸を合わせる。すると体が自然に浮き上がるような立体的な空間へ導かれる。

言うまでもなく生の魚にかぶりついたり、冬の撮影で、氷水につかったり、サバイバル生活の撮影を考えただけで、涙が止まらない。どれだけの苦労があって、どれだけの辛さを乗り越えた末出来た世界観だろう。

見終わった後立ち上がれなかったのは言うまでもない。

復讐は何も解決しない。しかしそれが生き延びる理由になったことも事実。当たり前に今日を迎えて生きてること、そうして生かされてること。当たり前であって当たり前でない。今日も息をしている。それだけで素晴らしいことなのだ。生きるためには息をしなければいけない。息をしていれば生きていけるのだ。大きく呼吸して生きてることを実感した。
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