ゆきまる

沈黙ーサイレンスーのゆきまるのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
4.7
脚本演出⭐︎5
演技⭐︎5

生きるとは、信仰とは?
誰しも一度は向き合ってほしい重厚な大作。

江戸時代、激しいキリスト教弾圧が行われている長崎にて。
棄教しなければ、信者を殺すと迫られるイエズス会宣教師の苦悩を描く。
迫害や弾圧に屈することなく、自らの信念を貫き通すことが正義なのか、棄教して、目の前の信者の命を守ることが正義なのか。
神に問いかけ、救いを求めても答えはなく、神の『沈黙』がひたすら重い。

長崎のキリシタンたちも、最後まで信仰を捨てずに踏み絵を拒否し、処刑される者、踏み絵をしてその場で処刑を逃れる者、その後深い罪悪感に苛まれ、宣教師に告解を頼む者など様々だ。

宣教師ロドリゴも、激しい葛藤の末、棄教を選ぶ。

沈黙という題名がこの作品の全てを体現しており、様々な思索が頭を巡る。

信仰とはなんなのか?答えを出さない神を前に、私たちは何を祈り、どう行動すればいいのか。自身の深い内面で、神と対話を繰り返し、答えを見つけることこそ神が与えた最大の試練なのではないか。

亡くなったロドリゴの手の内に小さなキリスト像が映され、映画は終わる。棄教させられ、表向きには仏教徒として生きながら、本当の信仰については沈黙を貫いた。人間の内面は、沈黙を盾にすれば誰にも踏み入れられることのできない聖域である。

この最後のシーンは、信仰を葬られた彼の無言の勝利宣言のように見えた。

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裏切り者として描かれるキチジローは、ある意味一番人間らしい。生きることと、信仰を理性的に天秤にかけて、その都度生きることを選び、それでいてどんなに宣教師に疎まれても告解をやめない。
生きることとは、綺麗事では済まず、さまざまな矛盾と葛藤を抱えることだと思い知らされる。
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この壮大な哲学作品に命を吹き込むキャストの演技も全員素晴らしい。
特に、アンドリューガーフィールドと窪塚洋介の演技が印象的。
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