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沈黙ーサイレンスーのryodanのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
4.4
2017-01-26

M・スコッセッシ監督最新作。
遠藤周作の「沈黙」の映画化。
80年代に公開された「最後の誘惑」の大コケで、失意の中読んだ本がこれだった。「最後の誘惑」でも、ユダの裏切りを裏切りざるを得なかったと、人間的に描いた作品だったような。個人的に一番しっくりいく解釈で、今もその解釈を信じています。今作でも、一番のキーパーソンとなるキチジローを、罪深く弱い人間として窪塚さんは熱演してました。告解を得れば、罪が赦されるという形骸だけの宗教の限界。仏教の念仏を唱えれば、極楽浄土に行けるという、日本の宗教観との乖離。仏教は、どうやって死を迎えるかを主に捉えるのとは反対に、キリスト教は、いかに生を宗教と擦り合わせて生活すればいいのか、だと思うんですよね。自分の意志で、自分がどうあるべきかを問う宗教が、受け身の仏教国に根付くはずもなく。そこを説かないで、やたらと押し付ける伝道師の苦悩が、中盤からグイグイ引き込まれていきます。弾圧されればされるほど、結束が強くなるという皮肉。今の中東の混乱も頭に浮かびました。キャストの体当たり演技がスゴイです。皆ガリガリで、特に塚本さんは、あういう演出大好きだと思うんです。何十年も温めた企画って、思いが強すぎてだいたい盛り込み過ぎになるんですけど、今作はギリギリでしたね。
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