ふき

ホーンズ 容疑者と告白の角のふきのレビュー・感想・評価

4.0
絵面的には角が映えた主人公のイグだけが異常なのに、実際は角によって本音を引き出された周囲が異常という、謎のバランスが面白い。イグを演じるダニエル・ラドクリフ氏の「なにやってんだお前ら……?」な演技も最高。真面目なお話を語ると同時に炸裂するアレクサンドル・アジャ監督の悪趣味演出で、退屈なシーンが一つもない。
“角”という本音を引き出すファンタジー設定は、ミステリーの駆動力としてはご都合的すぎて満足度を低めているが、大人になりきれない登場人物たちのすれ違いをあぶり出す道具という点では成功している。伏線の張り方も面白いし、「そんなの回収しなくていいよ!」と言いたくなる要素を拾ってくれるのも嬉しいところ。
事件としては、もうちょっと強度のある解決と動機を持ってきてくれれば、と思わなくもないが、満足の部類。

しかし、ダニエル・ラドクリフ氏が演じてきた役柄でもある「どれだけ強大な力を得ても本質的に弱いところを持つ」という人物像から、氏は逃れることができるのだろうか。心配と言えば心配。
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