しろくま君

自由が丘でのしろくま君のネタバレレビュー・内容・結末

自由が丘で(2014年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

何に感動したのか上手く言えないけど、感動した。

韓国映画なのに、韓国映画を観ている気分にならなかったのは、ほとんど英語で繰り広げられる会話劇のせいか、主演の加瀬亮のせいか。そのどちらでもない気がする。雰囲気が、僕が今まで見てきた韓国映画のそれとは違い、すごくフランス映画を観ているような気分になった。ホン・サンスの映画を観るのは初めてだったが、すごく好きだ。何も伝えてないようで、何かを伝えているシナリオや、あえて説明をしない展開、すごく彩りが素晴らしい画がとても良かった。

話の流れがバラバラになる展開は好みでは無いのだが、モリさんが書いた手紙を読んで思わず落としてしまい、そのせいで手紙の順番がバラバラになり、話の展開もバラバラになるというくだりはすごく好きで、頭を使わなければいけないんだけど、話にそこまでの中身がないのと、短い話なのでサクサク観れた。

モリさんの、会話はできるけどたどたどしいというか、けして美しい発音ではない英語に最初はイライラしてしまったが、後半になるにつれて「こんなに頑張って英語を喋ってまで彼女に会いたいのか」という気持ちになる。ただ、プロポーズしたい女がいるのに気まぐれで違う女と寝るのはやめなよ…。そしてそれを手紙で書くな…。

映画内ではとても醜い争いが起こるシーンがあるのだが、あれを手放しに非難できない演出にしてるのすごいと思う。確かに明らかに少女との喧嘩シーンでのサンウォンはクソ野郎だけど、だからといって彼がクソ野郎だというわけではないことが、モリさんとの会話でわかる。そしてそれは映画内ではなく、現実の中でもそうなのだということを僕たちはもっとわからなければならないと思った。

僕はハッピーエンドが好きだから、最後のクォンの笑顔に泣いた。まさかハッピーエンドになると思わなかったから尚更だ。そして、それまでしかめっ面ばかりのクォンの笑顔を見た時、ソ・ヨンファのファンになりました。最初は加瀬亮の相手役としては年上すぎるな…と思ったんだけど、国籍も年齢も関係なく、人と人なのだと映画を観ているうちに思わされた。

映画の主人公にしては、すごく面倒で、変で、かっこよくなくて、そして別にリアリティがあるわけでもないのに、どうしてかモリさんはすごく好きだな。

最後、2人が結ばれた後、机で突っ伏してモリさんが目覚めるシーンで「え!夢オチなの!」ってなったけど、クォンが落とした手紙を拾う時、1枚落としていたから、読まれなかったエピソードとしてのシーンだとわかった時、この映画は本当に素晴らしいなと思った。☆5でもいいけど、もう少しクォンとのエピソードが欲しかったから、このスコアです。