OASIS

自由が丘でのOASISのレビュー・感想・評価

自由が丘で(2014年製作の映画)
3.0
片思いの女性クォンを追いかけてソウルへとやってきた日本人のモリは、迷子の犬を見つけたことからカフェ「自由が丘」の店主と仲良くなり...という話。

加瀬亮主演のホン・サンス監督作品。
「時間は必ずしも過去から現在へと向かっているわけではない」と時間についての本を常に持ち歩き考察する主人公は語る。
この映画もそんな時間を弄ぶがごとく、過去から現在へ、現在から過去へと時間軸がてんでバラバラに描かれている。

主人公が町にやって来たと思えばすぐにカフェの常連になっていたり、同じく韓国人の男性やアメリカ人と旧友の様に仲良さげに話し合っていたりと、もう既にある程度の関係性が出来上がっている状態からどんどん時を遡って行くと思いきや少しだけ未来へ進んで行ったりとかなり分かりにくい構成であった。
難しく考えると「メメント」にも似ていると言えるが、そんなややこしさよりかは自由に揺蕩う時間を楽しむ空間に迷い込んだかのような異国間を味わうといった感じだろうか。

現在行われている会話の中で出てくる全く知らない情報が、過去へと戻ると解明されて行くという過去と現在の補完関係によって話は進むが、やっている事と言えばいつものホン・サンス作品同様にのんびりだらりと流れる時間の中で男と男、または男女が酒を酌み交わし会話を楽しむといった何の代わり映えもしない内容。

想い人に手紙を書く傍、カフェの店主と良い感じになりやがて彼氏がいるのにベッドを共にしてしまうという、これもまたいつもの男のだらしなさを描いている。
加瀬亮のベッドシーンは他のホン・サンス作品に登場する男達と違ってキレイな印象だったのでそこは「らしくない」と思ってしまった。

映画は1時間ちょっとしか無いのだが、時間がめちゃくちゃにシャッフルされているという構成上ストーリーに入り込み辛くて体感時間は割と長め。
そもそもその意図が良く分からないので、いつもは感じる超限定的な空間での居心地の良さや男女の会話の面白さみたいなものは感じられず残念だった。
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