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雨の日は会えない、晴れた日は君を想うのmomokaのレビュー・感想・評価

4.2
前々から気になっていたが、なかなか観れなかった本作。やっと鑑賞できました。

妻ジュリアンの運転する車にともに乗っていたデイヴィスは、不慮の事故で彼女を失ってしまう。
彼女が亡くなったにも関わらず、彼は彼女のことを愛していなかったと口にする。確かに、彼女に対して、喪失感や絶望感、愛情などの感情があるはずなのに、何の感情も湧かないと。そうしたなか、ふとしたきっかけでシングルマザーのカレンと、反抗期中の息子クリスと出会う。

デイヴィスは感情との向き合い方が分からず、家電製品や会社のパソコンを分解したり、彼女との「結婚生活を破壊する」と言って、共に暮らしていた一軒家までも解体し始める。そうすることでしか、感情のやり場がなかったのだと自分は感じる。そんな彼の話をただただ聞いてくれる、良き友達となったカレン、徐々に心を許し、自宅の解体作業をともにして、兄弟のようなクリスとの関係は観ていて心地よかった。

そんな分解・破壊行動ばかりに走っていた、デイヴィスがジュリアンの残したメモを読み、涙が抑えきれずに、初めて彼女のことを想い泣いてしまうシーンがある。感情が溢れ出した彼の涙に、鑑賞側の心まで揺り動かされた。
ラストも粋な演出でとても良かったと思う。ジュリアンに対する”愛”を心に抱えて、「破壊」から「再生」へと歩み始めたデイヴィスはいったいこの先どういった人生を送っていくのだろうか。

「愛はあった」
確かに感情は目には見えない。だからこそ、勘違いしたり、不安になったり、衝突したりしてしまうものだ。何を持って、愛と呼ぶかなんて私にはまだまだ未熟で分かりそうにもない。でも、自分の大切な人たちには、自らの想いや感謝の気持ちを丁寧に忘れないように伝えようと思った。いつ別れが訪れてもいいように。

それにしても、デイヴィス演じる、ジェイク・ギレンホールの演技力の高さはやはり物凄い。繊細な感情が手に取るように伝わってきた。また、オープニングとラストあたり?で、ショパンの『夜想曲』(ノクターンOP.9 NO.2) がかかるシーンがあり、ショパンが個人的に好きな作曲家ということもあって、心に響いた。全体的に静かな雰囲気で物語が進んでいくので、だからこそ、デイヴィスの分解・破壊行為が際立つ演出になっていた思う。

今日は落ち着いた気持ちで、静かに映画の余韻に浸りたいという時にはオススメの作品です。ただ、甘いラブストーリーではないので、そこはご注意を⚠︎
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