突然の事故で愛する妻を喪ったデイヴィス。それなのに、彼には何の感情も湧いてこない。気になるのは、25セント入れたのに出てこないチョコの自販機ばかり。
投資会社でのなに不自由ない毎日の一方で空虚に思えた彼の毎日は、自販機会社へあてた一通の苦情の手紙で変わりだす…。 喪失から何かを取り戻すのではなく、壊すという行為に容赦がなく、随所に笑いが散りばめられている。
そんな合間に差し込まれる、亡き妻との思い出のフラッシュバックやデイヴィス自身の眼差しの変化に、彼がものすごく大切なモノを失ったのに、それに気づいていないというもどかしさを誘う。
極端にドラマチックな展開はなく、奇妙なつながりでつながった、どこか傷を抱える人々がプラトニックなまま、それぞれの傷を舐め合うように丁寧な人間関係を築いていく。
危なっかしさの漂うデイヴィスの行動から一歩も二歩も遅れて押し寄せてくる感情の波の満ち引きに、きっと誘われるはずです。
心地よく作品との時間を楽しめる傑作でした。