次男

オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分の次男のレビュー・感想・評価

4.1
…これはすごいなあ。

ワンシチュ系・密室系・一人芝居、これまでにいくつか観ていたけど、まずもってこれはちょっと、こと「制限」という意味では、次元が違う。なんせ動くのは、トムハーディの上半身だけ。

そのワンアイデアをどんだけエンタメにできてるんや!と期待してみれば、期待をゆうに超えてた。超えてたというか、そんなことができるの?!というか、予想していたハラハラドキドキなんてもんじゃなく、これは一人の男の人生の話だった。なんてすごい脚本だ。

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トムハーディがすごい。
こんなにすごいのかと思った。

そして、臭いことを言うなら、芝居をしていたのはトムハーディだけじゃなかった。電話の先の誰かって意味じゃない、編集とカメラが、これはもはや芝居のレベルだった。
フォーカスの置きどころ、車の振動のブレの有無、ガラスに反射する光、的確な実景と、巧妙なディゾルブ、挙げだしたらキリがない!
「86分の短尺で、俳優一人で、ワンシチュで、さぞコスパの良い映画でしょう」なんて思ってた自分が恥ずかしい。もはやぞっとする、いかに綿密に撮られているか、繋がれているか、どれだけの量を撮ったのか。いったい何日、ロンドンまでの道のりを撮り続けたのかなあ。

鑑賞後のスタッフインタビューでは、素材は実に30時間分に及んだとのこと。夜のハイウェイは美しいけど、わかりやすい画変わりなんてなくて、よくもまあこれだけ飽きさせないバリエーションの映像を切り取ったものだと感嘆する。

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それにしても、リアルタイム86分の、高速を走る車内の男の姿を観て、まさか人生を、生き方を思うことになるとは、思わなかったなあ。きっとこの映画について語るとき、人生の話にすらなる。