ジーナ

リオ・ダス・モルテスのジーナのレビュー・感想・評価

リオ・ダス・モルテス(1970年製作の映画)
4.9
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーによるテレビ映画及び単独監督作としては初のカラー作品。

〜あらすじ〜
大学生のハナは、長髪イケメンのミヒェルと交際中。
そんなミヒェルと結婚して、子供を産み、専業主婦になる事を夢見ている。
しかし、ある日ミヒェルはかつての親友ギュンターと奇跡の再会を果たす。
そして、昔交わした約束を今果たそうと夢を語り合う。
それはペルーのリオ・ダス・モルテスに行き、そこに眠る秘宝を掘り出そうという壮大な夢だった。
しかし、彼らにはお金がない。
幸せな結婚生活を夢見るハナは2人に反対するが、そんな彼女をよそに彼らは何とか資金を工面しようと愛車を売ったり、家を引き払ったりと奔走する...
(原案:フォルカー・シュレンドルフ)

いやぁ〜、超好みでした😍
この映画にはハナ・シグラの魅力が満載だ!!
※日本ではハンナ・シグラ表記が流通しておりますが、どうやらドイツ語の発音上、ンが入るのは有り得ないと有志が語っていたので、これから僕もハナ表記に統一します💦

オープニングから冒頭部分に掛ける色彩やらカメラワークのセンスが光っている!
母親からの長電話に嫌気が差し、気怠そうに下着姿でタバコを吸うハナが輝いて見える。
そういえばハナは「インゴルシュタットの工兵隊」でも専業主婦を夢見る純粋な女の子を演じてましたね。
そんな彼女が彼らに振り回される姿は哀愁漂う...

何と言ってもミヒェルの残念イケメンっぷりが半端ないのだ。
お金も計画性も無いのに突発的に宝探しに旅立とうとして、 ハナとの思い出が詰まった愛車を売ってしまい、ハナには泣かれる始末。
そもそもリオ・ダス・モルテスという川はブラジルにある事を踏まえると、ミヒェルとギュンターにはどうも学もないのかな?
フィクションだからペルーにあるという設定なのかもしれないけど、ミヒェルがブルーカラーの塗装技師で、ギュンターが出兵を忌避した経験のあるセールスマンって役なのを考えると決して上流階級でも知識人ではない。
それを証明するかのように、ハナの親戚だという大企業のオーナーへ「ペルーで起業するんで投資してください!」と嘘のプレゼンをする。
その結果、そのお粗末な企画内容を馬鹿にされて恥をかき、退散するハメになる。
このシーンがマネーの虎っぽくて面白いw
更にはミヒェルはハナの存在を面倒に感じてきしまう始末。
ちゃんと働いて結婚したれよと呆れるばかりである。
彼らは彼らなりに臥薪嘗胆の思いなのかもしれないが...

本作でもファスビンはちょい役で出演!
映画史に残る名タッグであるファスビンとハナがダンスを踊るというファンには堪らないシーンでした。
しかし、ハナとのダンスに嫉妬して文句を言う自分の彼女をビンタするクズ男であった...w

まだこの頃は撮影監督にミヒャエル・バルハウスはいませんが、演出が物凄く凝っていて、画面を眺めるだけでも楽しい。
固定カメラの前で俳優達がいかにもな演劇的立ち回りをしながらセリフを交わすシーンや長回しは初期ファスビンらしさがあるし、本作は珍しく一人称視点のロングショットがあって驚いた!
また、ストーリーの合間合間に本筋とは無関係のギャグとしか思えないシーンを挟むのも好き。

なかなか資金も集まらず諦めムードの中、果たしてミヒェルとギュンターはリオ・ダス・モルテスに行く事は出来るのか!?
ハナは幸せな結婚生活を手に入れられるのか!?

ファスビンダー映画はほぼ全てそうなんですけど、ラストシーンが脳裏に焼き付く。
本作も例に漏れず素晴らしいラストでした。
ドイツ国内外で評判は著しくないようですが、ファスビン自身は好きな映画だと公言しており、インタビューでも「この映画には深刻さもないし、問題提起もない。そこがいいんだ」と解説している。
問題提起が無いわけではないと僕には映ったんですけど、確かに他の作品に比べると軽いし、冷たくないし、御伽噺的だなぁとは思いましたw
ファスビンダー信者なので激甘評価ですが、許してくださいませ。

※ファスビンダー映画全制覇まで、あと11本!
ジーナ

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