エイデン

予告犯のエイデンのレビュー・感想・評価

予告犯(2015年製作の映画)
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警視庁サイバー犯罪課のエリート刑事でチームを取りまとめる絵里香は、部下の報告に上がった“シンブンシ”というユーザーネームの人物が配信した動画を確認していた
それは、文字通り新聞紙を頭巾のようにして顔を隠した男性が、ネットカフェから世間への不満をぶちまけ、集団食中毒問題で死者まで出ながら、会見で法律のせいだと逆ギレを起こした食品加工会社に制裁を加えると語る動画だった
愉快犯かと思われた矢先、その食品加工会社が放火される事件が発生する
捜査を進めると、今回のようなシンブンシによる予告犯罪は3件目であることが判明
2週間前に起きた最初の犯罪では、SNSでバイト先の調理器具を使いゴキブリを揚げる動画を投稿し炎上した青年が無理やりゴキブリを食べさせられており、
2軒目は届け出もなかったものの、捜査の結果 レイプ事件の被害者に対し自業自得とSNSで発信した男が、拉致監禁され肛門にバイブを挿入されていた事件が露呈する
本格的に犯人の逮捕に乗り出した絵里香らチームの面々は、動画が全て“ピットボーイ”というネットカフェから配信されているとわかる
ネットカフェの店長によればセキュリティ対策も万全で、ワンタイムパスワードのトークンを使用しなければパソコンは使用できないようになっており、
そして張り込みの最中、シンブンシによる新たな予告動画が公開される
面接の様子をネットで中継して嘲った面接官を制裁するというもので、絵里香はすぐに犯人の確保と狙いの面接官の保護を命じる
すぐにそれが県外の店舗から配信されたものと判明し、警察が急行するも犯人の姿はない
やがてそれが蒲田の店舗を経由した送信された映像で、犯人達は別の場所にいると判明
映像の送信元を探り、付近の賃貸マンションをくまなく捜索したところ、それらしき部屋を発見するも、そこにはパソコンだけが放置されており、そこには犯人達が拉致した面接官をバットで殴りつける様子が映し出されていた
絵里香はシンブンシによってまんまと踊らされてしまったのだ
これまでの映像を洗い直した絵里香らは、これまでの映像に映るシンブンシは容姿が異なっており、複数犯であると断定する
社会への恨みが引き金となった犯行と考えるが、シンブンシの主犯格であるゲイツこと奥田と、仲間のカンサイ、ノビタ、メタボの目的は全く異なるものだった



筒井哲也原作の同名漫画を実写化したクライム・サスペンス

イカれた知能犯と警察の攻防戦と思いきや、シンブンシを主人公にしたダークヒーローもの
途中ガッツリ差し込まれる回想シーンで明かされる過去は普通に物悲しくて同情を誘うには十分
キャラの臭さは若干あるものの、シンブンシ一味はみんな良いし生田斗真はクールかっこいい
シンブンシというキャラクターもSNS社会に良く映える

この社会へ一石を投じる毒が個人的には気に入ってて、シンブンシのやってることは私刑行為ではあるんだけど、被害者は擁護しきれない連中ばかり
炎上という形で社会的にも批判の的となっている調子こいた馬鹿に相応の報いを受けさせるというシンブンシは思わず応援したくなる人も多いと思う
シンブンシの目的とそうした犯罪行為の繋がりは彼らの半生が関係してる
社会から爪弾きにされ、行き場を失った故の犯罪行為は、警察の絵里香さんが言うように何の言い訳にもならない不条理なのは間違い無い
ただそこで、どん底に近い生活からその身一つでのし上がって、誰もがそうなれると信じてる絵里香と真っ向からぶつかる構図になってる
同じどん底にいながらも、どうあがいても這い上がれない人がいる
そんな人に、どん底なのはお前のせいだとは口が裂けても言えないはず
そうして生々しく描かれているのは、『ジョーカー』や『パラサイト 半地下の家族』でも触れられる残酷な現実に通じる
ぶっちゃけクソうざったいと思ってた絵里香さんが辿る顛末も一つ見どころだと思う

こう長々と語っておきながら、前述したお涙頂戴が強めに演出されてるので、どこにテーマを置いているかが霞んでいるようにも思うけど、全体の締まりも良く、言われなければ漫画実写化ともわからないような出来なので広くオススメできる
鬱屈した人生を送る方には特に
もしYouTuberデビューするならこうなりたいね
エイデン

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