こたつむり

博士と彼女のセオリーのこたつむりのレビュー・感想・評価

博士と彼女のセオリー(2014年製作の映画)
2.9
一晩寝かせておいたスープの上澄みだけで作られたように、とても上品で繊細な作品。

僕は、解釈を一方的に押し付けてくる作品は苦手です。ほら、ここで泣いて~とか、ここで怒って~とか、製作者の意図が見え隠れすると冷めていくだけなのです。
とは言っても、解釈が自由過ぎる作品も苦手です。我儘な注文ばかりで申し訳ありませんが、妄想もとい想像力が枯渇しつつある身なので、ある程度はガイドが欲しいのです。脳汁垂れ流しまくりの十代とは違うのですから勘弁してほしいのです。

さて、本作でありますが、とても丁寧に優しい気持ちで作られていることはよく分かります。関係者がご存命でありますから、そちらの方にも配慮する必要があるでしょう。しかし、あまりにも観客側への想像力に委ね過ぎなんじゃないでしょうか。特に物語後半の描かれる博士と夫人の選択については、そこに至るまでの下地が少なすぎると思うのです。だから、物語の途中から登場人物に感情移入が出来なくなってしまい、最後には敗北感のようなものしか残りませんでした。
まあ実話ですからね、なんて言われたらぐうの音も出ないんですけどね。ぐう。

あと、最後に。
本作を観て博士が泣かれた、とのことですがね。当事者ならば当たり前のことだと思いますよ。色々なシーンが記憶を呼び起こして感傷的になるのは当然の反応でしょうから。なので、わざわざ宣伝に使う話題ではないと思うんですけどね。なんて思う僕はひねくれ過ぎですね。ぐう。
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