emily

サヨナラの代わりにのemilyのレビュー・感想・評価

サヨナラの代わりに(2014年製作の映画)
3.7
 順風満帆な人生を歩んでいた35歳のケイトはALSだと診断され、1年半後には車いす生活を余儀なくされる。自身を病人扱いせず話を聞いてくれそうな介護人として女子大生のベックを雇う。彼女は病気の知識もなければ料理もできない。夫も反対しているが、ある日夫の浮気を発覚し、ベックに家出の手伝いをしてもらうことで、二人の間に友情が芽生え始め・・

 順風満帆な生活、夫の友人達と食事会を開きうわべの会話を楽しむ。そこには心は通っておらず、夫との生活にも同じ事が言える。ベックを雇ってからは真逆の生活スタイルをしっかり描写し、二人は何度も衝突しあう。夫しか頼る人がいないと思っていたケイトの心を変えるのは、浮気発覚とベックの存在である。その屈託のない言動に、ケイトも今までかぶってきた鎧を徐々におろそうとしていくのだ。当然それはケイトだけではない。ベックもまた死を目前にするケイトと接する事で、心の繋がりを実感していくのだ。ケイトを演じるのはヒラリー・スワンクは相変わらず繊細な演技で、徐々に病気が進行していく様を体当たりで演じている。一方のベックを演じるエミーロッサムの変貌ぶりも見事である。徐々に心を通わし、徐々に化粧は薄くなり、心からケイトを思っているのが伝わってくる。

 二人の関係はほんとの自分と向き合わせ、それが自信となっていく。同じ病気の人との出会い、うわべの会話を楽しむ食事会ではなく、下品でも心から笑いあえる友人達と過ごす食事会。短い時間にケイトはケイト自身になり、ベックは信頼できる友が出来、自信を身に着ける。

 血のつながりや過ごした時間ではない。互いに思いやる事、それは自然と自分と向き合う事に繋がり、人を愛する事に繋がる。病気になるのは悲しい事ばかりではない。終わりが見えているからこそ、人生を感じ、生きる事を実感できる場合もある。そしてそれは自分自身への問いとなって返ってくるのだ。自分の人生を生きる事。死んだように生きてる自分自身の胸に問うのだ・・生きる事生き抜くこと。それが出来れば人生に悔いなんてないのだと。
emily

emily