Kuuta

マウス・オブ・マッドネスのKuutaのレビュー・感想・評価

マウス・オブ・マッドネス(1994年製作の映画)
3.8
「読むと正気を失うホラー小説は、聖書のメタファーであり、宗教に影響されて個人の世界観があっさりと崩れていく恐ろしさと滑稽さを描いた、メタフィクショナルな快作である」

…と、特権的な気分でゲラゲラ笑っているホラー映画ファン、お前らも同類だからなと、念押しされるラストが痛快だ。

詐欺を見抜くのが仕事の保険調査員のジョン(サム・ニール)は、冒頭で写真を使って真実を暴くが、中盤、いくらでも変化する絵=映画に精神をやられる。

「カーペンターズなんて聞くな」といきなりメタ発言。境界を越える動作として、ガラスが突き破られたり、ポスターの裏を覗いたり、道路に引かれた二本の線が点線に変わったり。とうもろこし畑の切れ目の向こうに混沌が広がっているシーンは「LOOPER」を思い出した。真上から見下ろされる構図は神に支配される人間を示唆?

クリーチャーの造形やポストアポカリプスな世界観は安定のクオリティ。世界が真っ赤になったり、真っ青になったり。やたら風が吹くのも良い。「読者のためにキスをする」のは、B級作品にエロを求める映画ファンへの当て付けに感じる。

著者が本のページのそのものとなり、破れた紙の向こうにジョンが顔を突っ込む(ポスターになっているシーン)。虚実の境界が壊れ、フィクションに巻き込まれるというありがちな状況ではあるが、こんなに分かりやすく映像化してくれている映画も珍しいだろう。プーさんのハニーハントを思い出した。

本が製本されていく様子を撮ったアバンタイトル、これもよくある描写だと思うが、とにかくカッコいい。編集なのか撮り方なのかよく分からないが、カーペンターの巧さがいきなり出ていると思った。75点。
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