緋里阿純

プリデスティネーションの緋里阿純のネタバレレビュー・内容・結末

プリデスティネーション(2014年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

タイムトラベルモノという事で、前々から気になっていた作品。YouTubeの公式無料配信にて。

“鶏が先か、卵が先か”
この問いを描く衝撃のタイムパラドックスサスペンス。
原作はロバート・A・ハイラインの『輪廻の蛇』(未読)。

多くの疑問を持って始まる冒頭から、突如として始まるバーの男性客の自分語りには「どういう事だ?」と困惑するが、ラストを見届けて、冒頭から張り巡らされてきた用意周到な伏線の数々と、それらの見事な回収に唸らされる。「不完全な爆弾魔」という、映画オリジナル要素を取り入れる事で、サスペンスとしての盛り上がりも見せる。

特異体質により、自分の父母、果てにはずっと追ってきた爆弾魔まで、全てが同一人物だったという衝撃。
鑑賞中、爆弾魔に共感する男性客の姿に「いや、お前が犯人だろ?で、主人公は犯人を突き止めた上で、時空を超えて爆破テロを防ぎに来た特殊工作員なんだろ?」と思っていたが、ある意味でそれは正解だったのだ。正解ではあるのだが、微妙に外れた捻りのある答え合わせが気持ちいい。
時空警察がタイムトラベルを行う装置が、バイオリンケースというのもオシャレ。

複数の時代を跨り、やがて主人公に突きつけられる<宿命>。ウロボロスの蛇と同じく、自分の尻尾を噛み付くという“終点”に向け、更なる旅路の始まりを予感させて終わるラスト。

何より、これだけ濃密な内容を97分というコンパクトな尺で描き切っているのが見事。派手さこそ無いが、堅実で濃密な内容に、観終わった後あれこれ考えたり、考察を漁りたくなる。
緋里阿純

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