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スポットライト 世紀のスクープのkunicoのレビュー・感想・評価

4.3
よそ者馬鹿者若者は新しい風を社内に吹き込める、と新入社員の頃上司に言われたことがありますが、この映画はその新しい風がボストン・グローブにやってくる日から始まります。

ボストンという厳格なカトリック教徒が多く居住している地区で、以前ある神父が少年たちに性的暴行を繰り返していたという記事が取り上げられたのにも関わらず、誰もその犯罪を追求しようとはしない。
神こそは絶対的という宗教心は日本人の私たちにはあまり馴染みが無いものだけど、教会の不祥事を隠そうとボストン中で黙認、言及することをタブーとされてきた問題に、フロリダから出向でやって来た新編集長が調査を進めるようにとスポットライトチームに仕事を振るわけです。

信仰心が裏切られることの衝撃や、見て見ぬふりを続けてきたことの罪悪感が、スポットライトの四人を苦しめていきます。

ジャーナリストとはなんぞやと最近のニュースなんかを見てて思いますが、本来私たちが知らなければいけない現実っていうのはベッキーの不倫だったりシャブ中な清原ではなく、社会の陰でうごめいている想定外の悪ではないかと。

取材を通して、自分も相手も傷つきながらそういうことを記事にしたためているライターが今現在どれだけいるのだろうか。
そしてそのニュースがどれだけ世間で取り上げられているのだろうか。
自分はそこにちゃんと関心を向けられているのだろうか。

と、自分自身のことを顧みたりしてみましたが、使命感をもって仕事に取り組む人たちは何てかっこいいのだろう。
戸惑いながらも、社会に向けて自分たちのやるべきことをしっかり認識して伝えていく姿が印象的でした。
9.11があのタイミングで起きたこと、事件に対してコメントする神父を見つめるチームの眼差や私の感じ方が本当に複雑だったこと、この映画を見なければ得られなかった視点でした。

マーク・ラファロの喋り方が他の作品と比べてとても独特に聞こえて、役作りだとしたらやっぱこの人すごいなと思いました。


日本公開が決まる前に町山さんがラジオで話されていた記事を見つけました。

町山智浩 映画『スポットライト(Spotlight)』を語る http://miyearnzzlabo.com/archives/31555

グンと理解が深まります!これ読んだらもう一度観たくなりました!
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