Ryoma

あんのRyomaのレビュー・感想・評価

あん(2015年製作の映画)
4.4
春から夏に移り変わる時間を切り取った本作、時折り映し出される満開の桜、深緑の木々からの木漏れ日のショットが美しすぎて、静かに穏やかに進む物語の中にあるそれがより沁みた。
血のつながりや生い立ち、世代を超えた彼ら三人の深い絆なるもの、それぞれ耐えきれぬほどの苦しみを抱えた彼らが言葉で表せぬほどの強いつながりを築いていく様に観ているこちらも救われるような気持ちになった。
世間の目や偏見、悪意に屈せず、芯を持ち自分の心の声に正直であること、その上で人に優しくできることなど、人生で大切な様々なことを言葉で直接言わずとも暗示的に教えてくれた気がする。
そして、演者さんの演技が秀逸ですごい引き込まれたし、後半に向かうにつれ涙腺が緩々に…。特に、永瀬正敏さんや今は亡き樹木希林さん、出番は少ないけれど市原悦子さんが良すぎた。彼女二人の姿がもう見れないと思うと寂しすぎる。彼女たちが生きた軌跡を胸に刻んで生きていきたい。
エンドロールで流れる秦基博さんの『水彩の月』で綴られる一言一言が作品を投影したような曲で大切な曲になったし、これからこの曲を思い出すたび優しい気持ちになれそうだ。
劇中のどら焼きがとにかく美味しそうで、そんな風に感じさせてくれた河瀬直美監督の作品は初めて観たけれど、何気ない日常が愛しいと思える素晴らしい作品だった。
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