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母と暮せばのRiNのレビュー・感想・評価

母と暮せば(2015年製作の映画)
2.4
井上ひさしの名著「父と暮せば」の吉永小百合・二宮和也主演Ver.。父・娘ではなく、母・息子の目線から、また舞台は広島から長崎へと移り、描かれます。

黒木和雄監督の大名作(宮沢りえ・原田芳雄主演)があるにもかかわらず手を出してしまうその豪胆さにまずは拍手。そして、残念ながら黒木監督作には遠く及びませんでした。
相手が悪いです。舞台をそのまま映画として撮影したような、一見すると地味な手法に、全編主演ふたりによる密室劇のみで綴られた、痺れるようなあの傑作ですから、超えられないのは致し方ない。今回の主演はおふたりともいまいち演技派というよりはビジュアル系なところも、ちょっと惜しくはあります。
ただ、今作のほうがかなり親切です。山田洋二監督作の良さって、その易しさにありますね。最初の15分でこの主演ふたりの関係性や背景が全てわかる仕組みになっているので、映画を観るハードルはかなり低いと思います。映画苦手な人って、そのあたりの入り辛さが苦手なんだと思うのよ、なんだろう、常連以外の席が見つけにくい居酒屋っていうか。慣れてくるとそれが癖になるんだけどね~、おっと余談でした。
黒木監督作ではすべてを日常会話で説明しようとしているので、まず観客の目線なんかお構いなしにポンポン固有名詞が出てくるんですが、今作ではキーとなる人物の名前くらいしか出てこないし、きちんと映像付き。「神の目」手法で、相関図が大変わかりやすいです。

もし今作で物足りないな、と感じた皆さんはぜひ黒木監督ver.をお楽しみください…!
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