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皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇のemilyのレビュー・感想・評価

3.5
メキシコの「麻薬戦争」の現状をイスラエル出身の報道カメラマン、シャウル・シュワルツ監督が映し出すドキュメンタリー。

メキシコの国境の街シウダー・フアレスは、およそ100万の人口に対し、年間3000件を超す殺人事件のある“世界で最も危険な街”とされている場所。正義を守る警察官もまた麻薬密輸カルテルにおびえる日々だ。その捜査の手も買収され、カルテルに逆らうものは残虐に殺害される。同僚もたくさん殺された。それに反し国境を超えたアメリカの都市エルパソは年間殺人件数5件で、全米で最も安全な街とされている。

アメリカでも人気のある“ナルコ・コリード”という麻薬カルテルのボスたちは英雄としてたたえて歌うジャンルの音楽がある。メキシコ国内では禁止されているが、アメリカではビルボードにチャートインする人気である。

麻薬カルテルはもはやメキシコの文化になりつつある。悪を善とあがめるそんな若者たちが大人になった世界を想像するだけで末恐ろしい。起きた殺人も捜査されず、警察も買収されすべてが思い通りになっている。現状を変えたくても、その犠牲になるのはきまって家族や弱いものだったりする。ではその街に住まなければ、国境を越えれば助かるのか。逃げてばよいのか?では逃げることができない人たちはどうすればよいのか?

メキシコ人は愛国心も強く、家族愛も深い情に熱い人種。負の連鎖が導く未来を想像したくない。麻薬のほとんどがアメリカに輸出されている状態。もはやメキシコだけの問題ではない。これだけ麻薬カルテルの映画やドキュメンタリーが世に出ており、遠く離れた私たちですら、メキシコに対する先入観が植えつけられつつある。知るのは大事だし、それをしり、考えることは大事だと思う。

ただメキシコは素晴らしい国です。
遺跡も多く、海も美しい、食べ物もおいしいし、なにと言っても人があったかい。こうゆう作品が訴えることは非常に大事だし、考えるべきことだし、それに対して何かしらできることはないのかと思いますが、その一方で、観光客が減るのは寂しいなと単純に今回思いました。
emily

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