セトヤマ

恋人たちのセトヤマのレビュー・感想・評価

恋人たち(2015年製作の映画)
4.1
息苦しい映画だが、140分、ずっと画面から目をそらす事ができなかった。
行き場所を失った心の声がこれでもかと迫ってくる。
胸に突き刺さる映画だった。自分も痛かった。

特に篠原篤の迫力に押されてしまった。
彼の迫真の芝居に深く深く、悲しみに押し潰されてしまいそうになる。物語が進めば進むほど、辛くなってしまう。
そんな彼の前に現れる黒田大輔の優しい表情。
黒田大輔の存在感、そして篠原に語った言葉。
その一つ一つが自分の心を包んでくれた。
この二人の存在だけでこの映画は傑作だ。

他の登場人物たちのやり場のない思い、苦悩も分かる。
そしてそれもまた丁寧に描かれている。

僕はただ篠原に一番心を寄せてしまったけれど、
監督は偉大だ、現代を生きる人々の苦しみを丁寧にすくって表現していく。日本の今もつ空気感を描き出そうとしている。
映画を辿れば細かい所に日本が抱える問題を点在させている。

実に悲しい苦しい映画であった、自分の胃を鷲掴みにしてぐるぐると回してくる。ただ小さい希望もあった。
観終わって疲れたということはなかった
恋人たちは傑作だ。