セトヤマ

彼女がその名を知らない鳥たちのセトヤマのレビュー・感想・評価

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白石和彌監督作品は初めて観ました。
最近話題に上がることも多い監督作品、全体的に力強い画を作る人だなと。
それは寄り引きで言えば寄りの画が多いことも起因してるんだろうなって、
そして単純な寄りじゃないんですね、主役たちは引きでも寄りサイズの何かをナメていたり、
要するに狭い画ってことか。
その画面の圧迫感があって、抉るような作品と相性が良いというか、
観ていて登場人物の閉塞感をこちらも感じるみたいな。
それでいてカメラもワークしてたりするから面白い。
窮屈なんだけど躍動感がある、そんな印象でした。

作品に関していうと、
主演のお二人が凄く良いですよね。
自然体に見える素晴らしい芝居で、物語に引き込んでいく力。
どちらも嫌な感じなんだけど、目が離せない、
いつのまにかこの人物の魅力に取り込まれるというか、
本音で言えばこの人たちとは友達にはなりたくなんだけど、
最終的には妙に共感してしまう。
自分勝手に生きてるんだけど、その自分勝手さって人である以上誰しもが持ってることだと思うので、
それが強く出るか出ないか、映画的に人物が強く強く自分勝手に生きていく、望んでいくことが実に力強く、そしてその脆さに観ていて息が漏れる。
その繊細な感じを、最初述べたように、白石監督切り取っていく。
一個一個掬い上げていく感じが妙に心地よくもあり、気持ち悪くもあり。

原作は未読なので、映画だけでの判断ですが、
自分はこの映画の愛の形に憧れを感じました。
多分それは絶対に自分ではやらない形だからでしょうね。
良いとか悪いとかではないですが、
こういった不器用な感じ、それは一つの愛の形なんでしょうね。