セトヤマ

君の名前で僕を呼んでのセトヤマのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
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この映画のルックにやられた。
自然光を採り入れた柔らかな照明、
登場人物の心の中を覗く様なザラついたフィルムの質感。
ネストール・アルメンドロスを思わせる映像の感覚が僕の心を躍らせる。
これはいい映画だなと感じさせる力強さがある。

それに負けない丁寧な演出は、
人物の心の距離感を一つ一つ紡いでいく。
それは作曲をするかの様に、アダージョな、
そんな時間の流れ、そして突然激しく、
二つの心が引き合ったり離れたり。

ティモシー・シャラメの存在が素晴らしい、
青少年の揺れ動く感情を瞳に浮かべる、まだ何者でのなく何者にでもなれる、自身も優秀でそれを自覚し、けれど何か心の空白を埋められないでいる。
そこにスッと入ってくるアーミー・ハマー演じるオリヴァーという若者。

イタリアの美しい自然の中でイノセントな恋愛ドラマが織りなすフィルムに刻まれた感情をそっと体で受け止める。

僕は実に好きな映画でした、ラストに向かえば向かうほど、
この映画は本当に輝いていく。
見事に、全体が調和のとれた名作だなと思うのでした。