ぬ

仁義なき戦いのぬのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い(1973年製作の映画)
4.3
まず映画としてすごい面白いのは言わずもがな…やっぱすごいわ…
飽きる暇もないくらいめっちゃすごいスピードで話進むし人死んでいくよね。
映画に出てくる極道者たちの生き様のごとく刹那のうちにどんどん進んでゆく…
あと音楽、あのチャララーチャララーってやつ、あれを数えると映画の中で何回ヤクザが死んだかわかる…
静止画やナレーションを多用したり、人物と一緒に暴れまわりながら撮影してるみたいな臨場感ある映像だったり、深作欣二の演出、独特で面白い。
(ふと「ボラギノールの静止画紙芝居は仁義なき戦いからインスパイアされているのか?」と思った)

戦後の日本、原爆で壊滅した広島の混沌とした様子が垣間見られて興味深かった。
冒頭のきのこ雲のショット、そして「戦争という暴力は終わったが、戦後の秩序なき世界で若者は新たな暴力の世界に身を投じようとしていた」というナレーションも強烈。
戦時中なんて人がバンバン死ぬのが日常の一部だったんだろうし、真面目に生きていれば報われるって訳もなく、いとも簡単に人の人生が突然終わっちゃう世界で、そんなロシアンルーレットのような暮らしをしてりゃ、もう何も信じられないし、義理人情も仁義もなく自分の欲望のためなら手を汚すっていう生き方になるのも無理ないわな、とは思ってしまう。

出てくるキャラだいたいだけど特に菅原文太演じる広能、自分の身体を傷つけることや死ぬことや人を殺すことへのハードルの低さがすごいわ。
仲間のため組のために刑を食らうみたいな自己犠牲の精神が強すぎるし、割とそれを大したことない感じでこなす。
その、あまりにもあっけらかんとした死生観みたいなもんが、この人物たちがつい最近まで戦争という国をあげてのそれこそ仁義なき殺人合戦をやってた世界に住んでるんだってことを思わせるよね。
そして私達もそんな世界からたった数十年経っただけの世界に生きているということを思い出させられる。

そして悲しいのがさ、ヤクザの命がホントに使い捨てのコマみたいな扱いなことだよね。
政治家が自分たちにとって都合の悪い組織や人物を潰させるために、裏切らせたりくっつかせたりして組を操っていたりするわけで、ヤクザとなった人らって(そりゃ比べだしたら女性とか、より立場の弱い人たちはいるけど)別にブイブイ言わせてるような権力者だとか社会的強者とかじゃなく、フツーに弱者側のヤケクソの人たちなんだよね。
悪い大人たちに翻弄され、使い捨てのように命を散らして犠牲になるのは常に野良犬のように生きる末端の若者たちであり、それは戦争とおなじで、このシリーズの根底にある強烈な反戦・反権力のメッセージを感じました…

菅原文太さんって、刻まれたシワに渋さがあるけど、少し離れ気味のつぶらな瞳がとても可愛らしいお顔立ちですよね…
ぬ