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仁義なき戦いのtanayukiのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い(1973年製作の映画)
4.5
金のためなら平気で身内を裏切り裏切られ、虫けらのように人が殺されるさまを大胆に描き、従来の任侠映画とは一線を画した実録モノの「血風ヤクザオペラ」あるいは「広島弁のシェークスピア」。菅原文太演じる広能は、美能組組長・美能幸三がモデルで、彼が獄中で記した手記がベースになっている。

登場人物が多くシーンも細切れにならざるを得ない群像劇は、見ている人が展開についていくだけで疲れてしまって、2時間の尺で収めるのはなかなか難しいと思っているのだが、そんな疑念を吹き飛ばす、目の醒めるような快作が日本にはある。岡本喜八の「日本でいちばん長い日」「沖縄決戦」(とその派生版としての庵野秀明「シン・ゴジラ」)と、深作欣二の「仁義なき戦い」だ。これだけ多くの人が登場して、しかも身内と思っていた人物が裏切ったりするので、話が錯綜しそうなところを、テンポのいい展開とダイナミックな演出、ナレーション+テロップ+報道写真のような静止画像や新聞の切り抜きのうまい組み合わせによって、混乱させることなく見せてしまう深作監督の手腕に舌を巻く。そして、忘れてならないのが、津島利章による音楽。あのおどろおどろしいテーマ、あのトランペットのいななきを聴いただけで血湧き肉躍る人も多いのではないか。

Wikipediaの記述がべらぼうにおもしろいので、ぜひご一読を。「ゴッドファーザー」の大ヒットを受けて制作された経緯などがくわしく載っている。→ https://ja.wikipedia.org/wiki/仁義なき戦い

余談だが、呉のみなさんは「この世界の片隅に」に感謝してるのでは。呉のイメージ、だいぶ変えてくれたよね。

△2021/05/22 ネトフリ鑑賞。スコア4.5
△2016/05/27 iTunes登録。スコア4.0
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