「悲しいけどこれ戦争なのよね」
まず安直な邦題が失敗。これ、主役はケイト(エミリー・ブラント)と見せかけて、アレハンドロ(デル・トロ)でしょ。原題も「Sicario(殺し屋)」なのだから、そのままの方がラストに通ずるものがあって良かった気がする。麻薬取り締まりはもはや戦争なんだという暴力描写がすさまじい(麻薬戦争を知りたくばドン・ウインズロウの「犬の力」シリーズを読むべし)。麻薬撲滅のためにはどんな暴力も厭わないマット(ジョシュ・ブローリン)とアレハンドロの組み合わせは最強。一方で甘ちゃんのケイトには汚職警官も近づいてきたりと(アレハンドロが撃退!)敵味方入り乱れての緊張感あるサスペンスに仕上がっている。ラストのアレハンドロの復讐完遂の場面には恐れ入った(ハリウッド映画なのにそこまでやるか)!さすがドゥニ・ヴィルヌーヴ、淡々と描いて逆に暴力の恐怖が際立っていた。
デル・トロの存在を知ったのは「007 / 消されたライセンス」が最初だったと記憶しているけど、年をとってもなお狂気が宿る眼力と色気は衰えない(でも『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』ではおバカな役にも挑戦したりと憎めない)。