塩辛亭ショッパイ

ボーダーラインの塩辛亭ショッパイのレビュー・感想・評価

ボーダーライン(2015年製作の映画)
4.0
 主人公が始めの5分くらいしか主人公じゃない、そんな映画。

デキる女FBI捜査官ケイトがカッコよく敵の組織に乗り込んでいく冒頭5分。そこから先はずぅ〜っと「お前は何もわかっていない」「黙ってついてこい」と適当に扱われ続けるだけなので(いやこれマジでずっと続くので)終始、〝あれ? これ僕、ちゃんと話を理解できてますかね?〟的な不安感がつきまとう。

 そんな不安&不穏の先に待っていたのは、サイキョウ・クソカッケエ・マジヤバ・オニヤバ・ベニチオ・デル・トロの活躍ぶりである。圧倒的な能力とと憂いを併せ持つ傭兵がここまでどハマりする俳優いるんですかね。なんだよあのオーラと眼光の鋭さは。
 日本人でここまでのオーラを出せる役者はいるのだろうか。渡辺謙でもきついだろうし、哀川翔なんてもってのほかだ。試しに、家族で食卓を囲う麻薬カルテルのボスと対峙するシーンを哀川翔で置き換えて想像してみてほしい。…どうしても役不足すぎて笑えてくるだろう。それほどデルトロは凄いのだ。

 どんな生い立ちならあんなオーラを出せるのか。タイムマシンがあるならデルトロくんがまだ小学生だった時代に戻って「君の将来の夢なに?」って聞いてみたい。イメージ通り「暗殺者です」って答えてほしい。野球選手とかパン屋さんだとか言うわけないだろうし、言って欲しくない。

そんな怪優ベニチオ・デル・トロについてさらに知りたく、Wikipediaで調べてみたところ、

《2004年に『21グラム』の宣伝で来日した際に、熱狂的な日本人女性のファンから腕を噛まれる災難にあったことがある。その時に日本の新聞の紙面で「トロ様」と呼ばれた》

との記述が。
そりゃ、あんだけかっこよければ腕を噛みたくもなるだろう。気持ちはわかる。

 そんなことより気になったのは、「トロ様」のくだりだ。
彼の渋さとシャープさ、無骨さを知ったうえで「トロ様」と呼んでいるのか? 日本の新聞社は正気か? そこはどう考えても「デル様」だろう、雰囲気的に。
よくわかんないけど「トロ様」でないことはハッキリしていると、本作を見て強く感じた。
塩辛亭ショッパイ

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