塩辛亭ショッパイ

街の上での塩辛亭ショッパイのネタバレレビュー・内容・結末

街の上で(2019年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

①会話が噛み合わない ②表情に乏しく得体が知れない ③全体的に感性がズレている 

 特徴をあげてみただけで少し怖くなってくる本作の主人公・荒川青。3人以上ならいいけど、ふたりきりでお茶とかはちょっとイヤかも……そんなヤツ。完全にコミュニケーションが取れないというわけではないからこそ、逆に居心地の悪い違和感を覚えてしまうような。

 そんな男を佇まいも振る舞いも完璧に演じた若葉竜也、彼は役者として凄まじいな。学生時代に下北によくいた私だからこそ、あれは20代後半の下北人だと断言できる。

 一般的にみて“ピントがズレている“と思われがちな青は、下北沢という街に生かされているのではないか。下北の風土と、そこにいる人々によって受け入れられて人間関係が築くことができている、そんな気がする。彼が住んでいるのがもし、上野とか赤羽だったらもっと孤独だったに違いない。個人的なシモキタへの思い入れと、上野・赤羽への多大なる偏見込みなのはいうまでもない。

 とはいえ、本作はただのローカル礼賛ムービーではない。白眉なシーンは青が学生映画スタッフの女の子(イハちゃん:中田青渚)の家で一晩過ごす時間の、ゆったりしたあの会話劇であろう。

人は〝恋人に求める条件〟を問われると、「一緒にいて楽な人」「波長が合う人」といったフワっとした答えを出しがちだ。ファジーみ溢れる「楽になった」「波長が合った」その瞬間を映像化したのがこのシーンなのではないだろうか。「自然体でいられる人」ってなんやねん、どないやねん、と思っていたけど、このふたりのような状態のことを指すのかもしれない。青がどんどん“噛み合う人“になっていくのに感動を覚えた。

 結局、ふたりは恋人としてではなく、友達として関係を育むことになった。4人いたヒロイン候補のなかで青は、一見すると1番合わなさそうなモデル系元カノと復縁する。

そんな展開にこう感じた。あぁ、リアリティーないわぁー、サガるわぁ〜、と。

……と思いきや、ラストのラストシーン。こいつら波長ピッタリじゃん? な瞬間をまたも見せつけてくれるのである。あっぱれ。

若者の街、下北沢。この街を出ない生き方もアリなんだな。下北すぎてエモすぎる。

(チーズケーキの唄、普通に良すぎ笑)
塩辛亭ショッパイ

塩辛亭ショッパイ