「幕は開いてるぞ」
楽しかったっす。
ただエンドロールのときに満たされるような満足感とかはない……なんも残らない映画ではありますね。
冒頭の前提となる話を歌とともにダイジェスト的に見せる場面とかは、ストーリーテリングとして僕も大好きだし、ワクワクしたんですが、映画全体がそれくらいのテンポというか。
テンポはいいけど緩急は少ないといった感じでしょうか。
いいシーン、楽しい場面の ただの羅列といった感覚を味わいました。
物語に音楽を織り交ぜるのではなく、音楽に物語を乗っけたような、MV的。
しかしながら それが今のエンターテイメントの潮流に奇しくも合致しているんですよね。
その瞬間 その瞬間がパーツとして面白いのが売れるのが今っぽいんですよね。
ちょっと「SING/シング」に近い話ですけど、やはりカタルシスに欠けている。
本作は「SING/シング」と違って、人物の葛藤は描きつつも、パフォーマンスにかける努力や執念は描いてないんですよ。
そんなパフォーマーの全員が全員、歌も踊りも最初から上手いわけがないのに、その努力の過程はオミットされているのがノイズでした。
そりゃミュージカル映画ですから、歌や踊りのうまさにロジックなんていらないという判断でしょうが、それは言葉と歌の間に境界線のないミュージカルでの話であって、
本作のおいては普通の会話と歌の間の境界線は"ショー"というものを描く上で、避けられないものになっていると思うんです。
それに本作には"歌が上手い人"まで出てきちゃうわけですから、ショーマンたちが努力もなしに最高のパフォーマンスを繰り出すのにはどうしたって違和感があるんです。
そのへんをすっ飛ばして、良いところだけ掻い摘んだ作品ですから、楽しいは楽しいですけど、鳥肌も立ちますけど、物語的感動は少ないんですよね……。
