ふき

スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号のふきのレビュー・感想・評価

2.5
仮面ライダー一号二号が死んでショッカーの支配が完了したパラレルワールドを舞台に、一部のライダーが反旗を翻す作品。
……前にこんなお話あったよなあ、『オーズ』の春映画で。

多数のオリジナルキャストがお話に絡んだことで、この手の大集合映画では珍しく変身シーンをバッチリやってくれたのは嬉しかった。昔のファンとしては、現在のクオリティで見る555やゼロノスの変身はかっこいいし、ベルトギミックを活かした必殺技やフォームチェンジをバリバリ見せてくれれば、そりゃ楽しいに決まってる。子供向けとおっさん接待の両立した、とてもいい仕事だと思う。

しかしだからと言って、このお話運びは酷すぎる。戦闘が終わってお話が進むかと思うとまた戦闘になったり、各キャラの立ち位置や態度がよく分からないまま争う状態になったりと、お話が完全に戦闘に隷属している。しかも「戦闘メイン、お話はおまけ」と割り切っているならまだしも、今風に構成をこねくり回して「実は敵だった」「実は味方だった」「実は死んでた」「実は罠だった」を連発するから、長い戦闘シーンが何度も挟まることもあいまって、何が何だか分からなくなってくるのだ。しかも多数のオリジナルキャストにまんべんなく見せ場を用意した結果か、戦闘シーンがいちいち長く、今なにが争われているのかを見失いかけるレベルだ。九〇分の尺を使うなら、完全に戦闘に重点をおいてお話はシンプルにまとめるか、戦闘はほどほどに抑えてお話をしっかり語るか、どちらかだろう。今の構成では、お話を把握するのを放棄したくなる、というかぶっちゃけ退屈になる。
いきなり出てくる“あの人たち”の無茶苦茶さも、ここまでのお話を面白く語ってきた時にこそ「まあ最後くらいは子供向けサービスもね」と許せる無茶苦茶さなのに、全編サービスで無茶苦茶やった後に出てこられても、舌打ちしかない。しかもJの見せ場を奪っておいて、だぜ?

あとオリジナルキャストを用意するのはいいが、小悪党に堕した剣組とか、一瞬持っただけで捨てられるデネビックバスターとか、要所要所で「愛がないなあ」と感じられる扱いがあるのも事実。私は『剣』から平成ライダーに入ったので、橘さんが出たのには喜んだが、その後の扱いの酷さはちょっと擁護しきれない。

そんな感じで、子供層には楽しい映画だし、おっさん層が嬉しい場面も沢山あるから、見る価値がない映画とは言わない。ただまあ、オリジナルキャストとライダーアクションを楽しむための「ミュージックビデオ」と考えていた方が、ダメージは少ないと思う。

中盤でなんの前振りもなく登場する乾巧は、MCU版『シビル・ウォー』のホークアイを思い出す唐突っぷりで、燃えると共に笑った。
ふき

ふき