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パプーシャの黒い瞳のtransfilmのネタバレレビュー・内容・結末

パプーシャの黒い瞳(2013年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

ポーランド映画。どういう映画か何も知らずに観て、
途中でポーランドで実在したジプシーの詩人、ヴァリスという女性の伝記映画なんだと気づいた。
序盤、ちょっと微妙に感じるシーンもいくつかあったけど、静止画のモノクロ映像がとても綺麗だし、まるで絵画のようなシーンがとても多かった。

映像はとても綺麗だけど、
ストーリーとしては、パプーシャの伝記映画であるけどパプーシャの内面的なことはあまりわからない作品かもと思う。
たとえばパプーシャは子供のころから字に興味をもっていて、無理やりに習い始めたみたいだけど、なんでそんなに字に興味を持ったのか。とか。
パプーシャが字を学んだおかげで詩を生み出せるようになったのに、この映画はそれについてあまり触れてないように思う。

そういったパプーシャの内面の代わりに、この映画を観て分かったのは、ジプシーという人々の文化・価値観・生活など。
この映画を観る前から、ジプシーって、ヨーロッパではものすごく差別を受けてたという前知識はあった。
個人的には、この映画のジプシーたちを観ると、なぜ差別を受けるようになったのかがわかった気がした。なぜなら、この映画で描かれるジプシーは、ただ社会から一方的に拒絶されているわけじゃなくて、自らも社会を拒絶しているから。
この映画では、詩人として成功した後のパプーシャは全然幸せそうには描かれてなくて、むしろ本人は字を覚えたからとても不幸になったといっている。そんな風に考えなければならないのは、ジプシーがもつ外の世界を拒絶する価値観のせいだと思った。
だから、この映画で観たパプーシャの人生をそのままとらえると、ジプシーは社会から拒絶されるべくしてされた民族。滅びるべくして滅びた民族。という風に思えてしまった。

たぶんこの映画にそういう意図はないと思うけど、
でも少なくとも、ジプシーへの差別を戒めるような映画ではないんじゃないかなと思う。
一方で、ジプシーを軽蔑する映画でもないと思う。
この映画の美しい映像は、まるでジプシーたちとパプーシャの感性を表しているかのよう。

この映画は、パプーシャという芸術を生んだジプシーたちの感性を追悼する、彼らの滅びの映画だったのかなと思う。
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