emily

グランド・セントラルのemilyのレビュー・感想・評価

グランド・セントラル(2013年製作の映画)
3.0
今まで仕事を転々としてきたゲリーは、原子力発電所の作業員として働き始める。同僚のトニーの恋人カロルと恋に落ちてしまう。彼女と密会を繰り返し、仕事にも慣れてくるが、徐々に放射線に汚染されていく。数値は限度を超えながらも、なんとか数値をごまかして仕事を続ける。しかしそれも長く続かず・・

原発の仕事の内部事情がしっかり描かれていて、時折不気味なサイレンが鳴り響く、未来への不安感を彷彿させる。つかのまの休憩時間に笑顔が見えたり、友情や恋愛もあるが、そこは原発という大きな枠に包まれていて、いつ汚染されたり、事故で死ぬことになるかわからない。

しかしそんな不安以上に、仕事を失うことへの不安のほうが大きい厳しい現実、数値をごまかしたり、汚染されて坊主にされる女性もいたり、それでもこの仕事にしがみつかなければいけない現実。

同時に語られるラブストーリーにも放射能汚染と深いかかわりがあり、それが障害になり、また二人の未来も遮ることになる。カロルのチープな結婚式のせつなすぎる横顔には笑顔はない。まったく幸せな雰囲気が漂ってこないのだ。レア・セドゥが一番美しいと思えた瞬間だ。逃げる選択もない。それでも束の間の恋愛ごっこで、その恐怖から逃れたい・・
その恐怖を肌のぬくもりでなんとか忘れたい・・

エンドロールにもサイレンが聞こえる。
ここから出して。
こわいの。
心の叫びがずっと鳴り響いてるようだった。
emily

emily