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ブルックリンのkissenger800のレビュー・感想・評価

ブルックリン(2015年製作の映画)
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初見であまりに心が動いたせいで、あれから6年近くが経過しても再見できないでいる作品のレビューをなぜ今、上げておこうと思ったかっていうと、大学進学と同時にひとり娘がひとり暮らしを始め、過保護と言われようが屁でもねえ。というぐらい溺愛している父ではあるんですけどついさっきLINE通話が来て、地震ですごく揺れました、と。

お父さんに似てクールっつーか低温が平常運転なひとなので、字面ほどのエモさは無いんですけど「もう終わりかと思ったわー」と語っており、父は父で「終わりなら終わりで電話してる場合ではないのでは」と返し、しばらく喋った後「じゃあまた寝ますんで」「そっすか」みたいな会話をしたんです(まだ寝るの?)

物理的な距離が離れている以上、どれだけ娘の安否を気遣ったとて、出来ることなんて祈る以外は何もない。
考えたとき、ふっと思い出したのがこの作品で。
姉が妹に言うセリフ「叶うことなら何だってしてあげたかった。でもI can't buy you the future.(あなたの未来を私が買ってあげることはできない)」

つまりね、可能なら文字通り何だってするんですけど、それが無理なときは……無理じゃないですか。
永遠には世話を焼いてやれないわけで。
庇護する者が出来る最良の仕事って「自分がいなくなってもこのひとは大丈夫」って思えるところまで一緒に歩いてくることなんだ、といつか悟って、それでいえば自分に出来ることはやったしな。と思う父なの。君はここからは君の道を進むんだ、大丈夫、ホモサピエンス、だいたいそうやって来たらしいし。

とかなんとかいっても所詮n=1でしかないんだけど、この作品における姉妹の心境、ものすごく腑に落ちたんですよ。
ってある日ツイートしたら矢野顕子にリツイートされ、いたく心が豊かになりました、って自慢(どっとはらい)
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