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シネマ歌舞伎 二人藤娘/日本振袖始のtubameのレビュー・感想・評価

4.0
藤の精が艶やかに舞う人気演目『藤娘』を二人で演じる趣向の「二人藤娘」と、八岐大蛇伝説を描いた「日本振袖始」の舞踊二本立て。
平成26年の歌舞伎座公演をシネマ歌舞伎化したものだ。
本編開始前に監修した玉三郎さんの解説付き。


「二人藤娘」
一人でも華やかな『藤娘』の娘を2人にしたわけで、それはもう美しい。娘同士の戯れはまるで人形が遊んでいる様。当たり前の様に観ているけど、七之助さんと並んでも親子ほどの年齢差を感じさせない玉三郎さんの圧倒的な美、流石だ。
解説でもあったが、片方が男役になる場面は「男性が女性の芝居をしながら男の真似をする」という複雑な入れ子構造になっているのが面白かった。
あどけなかった娘が花が咲いていくように変化していく。最後にそれぞれの枝を背負って花道から去っていく姿には花の終わりの儚さもあり、幻想的で美しかった。
本来は衣装替えで娘が引っ込み舞台上に役者が居なくなる場面では、二人が化粧を直し衣装替えする舞台裏の映像が映り、別個の映画作品として楽しめるよう趣向が凝らされているのも良かったと思う。


「日本振袖始」
恐らく劇場中継か現地で一度観賞済み。
生け贄の稲田姫(米吉くん初々しい)と首長姫=大蛇の厳かな前半でぐっと期待を溜めて、勘九郎さんの素戔嗚尊が登場する後半で一気にスパーク!八岐大蛇を相手に大立ち回りの一大スペクタブル時代劇に!
美しい藤娘の姿を観たばかりの玉三郎さんが目玉をひんむいて青い隈取りの恐ろしい大蛇を演じるギャップがたまらない。この辺り、同時上映として実によく出来ている。
同じ顔・同じ扮装の役者が八人並ぶことで八岐大蛇を表現してるんだけど、一匹の大きな生き物の様に勢揃いする様子は何度観ても圧巻。素戔嗚尊が四方を大蛇に締め付けられるようにとり囲まれる画ヅラが強すぎる笑
そして素戔嗚尊と大蛇がツケ打ちの音と共にバッタバッタと何度も見得を切るのが最高にカッコいいんだよな~。実質全編浮世絵。
本作のようないかにもな歌舞伎演目大好物なので、観に来て良かったと心から思った。新作が嫌とは言わんが、古典からしか得られないカタルシスがある...


短い上映時間ながら、贅沢な重箱みたいに美しさも儚さもファンタジックアクションも詰まってて大満足の観賞だった。シネマ歌舞伎は今年もちょこちょこ観に行く予定。
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