tubame

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のtubameのレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
3.3
昭和30年代の閉鎖的な山奥の村が舞台。ゲゲ郞(目玉の親父)と銀行員・水木の出会いを軸に鬼太郎誕生の秘密を辿る物語。


上映していること自体知らず、観る予定はなかったが急に名前がよく目に入るようになり、気になって観賞(プロモーションをしておらず、口コミでの広がりだと言うから凄い)。
鬼太郎や猫娘の姿を観る限り一応一番新しいアニメの延長線上っぽいが、そちらは未視聴。というか鬼太郎作品そのものをろくに観たことがない。オカルトが苦手だからかも。
そういうレベルの人間だから細かいところまでは分からないが、アニメーション映画として出来がいいというのは間違いなく言える。
作画の綺麗さやヒロイックアクションも良いが、とりわけ鬼太郎というネームバリューの高さに甘んじないかなり攻めた重々しい物語には驚かされた。
冒頭から既に陰鬱な雰囲気を纏っているが、話が進む程に村と一族の禍々しく救いがたい事実が明るみになり、どんどん暗い沼に足を捕られていく感覚に襲われる。
本作はPG-12だが、それも納得のグロテスクな内容を含むため子供の観賞はお薦めしない。大人が静かに噛み締める作品だ。


ゲゲ郞と水木の関係性に惹かれた人が多くムーヴメントになっているようだが、自分からするとせいぜいイケメンだから女性に人気が出そうだな~と思った程度で、オタク受けは何ら狙っていないただの鬼太郎映画に思えたので盛り上がりに何となく及び腰になっている人もご心配なく足を運ばれたし。


個人的には水木のバックボーンに戦争体験が深く根付いている方が印象的で、実際に戦争を経て漫画を描いてきた水木しげるの不屈の精神(言葉にすると陳腐になってしまうが...)が息づいているのが良かったと思う。実写のゴジラも含め今年は偶然か戦争を題材に組み込んだ映画作品が多いが、本作もその一つと言ってよいのかも。


一番好きなのはなんと言ってもラストシーン。おどろおどろしい雰囲気なのに、芽吹いた力強い生命の輝きがとても美しく、眩しい。終始ヘビーなストーリーではあったが、希望を感じる終わりだった。
tubame

tubame