tubame

カラオケ行こ!のtubameのレビュー・感想・評価

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)
3.9
合唱部の中学生・聡美と、カラオケが上手くなりたいヤクザ・狂児。交わらない世界にいるはずの二人による歪な友情と異質な青春の一ページ。


随分前に原作は読了済みだったので短編のこれを映画化????と不思議でならなかったが、実際に鑑賞してみると聡美の少年らしいナイーブさと精神的に大人に変化していくひとときを前面に押し出した異色の青春映画として見事に纏まっていたなという印象だった。
オリジナルの展開や同級生の追加、台詞の変更、場面の組み換え、またある時は場面をバッサリカットするなど、かなりアレンジされているがどれもこれも取捨選択が大変巧く唸らされる(お陰で大人と子供が長時間密室にいる不安感も緩和されている)。
また原作漫画は所謂BLの雰囲気を多分に纏っているが、その空気をかなり排除したのも大きな変更点で、そう受けとりたい人は受けとれるし受け取らない人は受け取らなくてもいいみたいな絶妙な案配になっており鑑賞者の裾野を広げたのも良かったと思う。


主演の二人が良い。
多感な時期の聡美の繊細さや一見大人っぽいようで幼いところ、向こう見ずなところを齋藤潤が好演。その爽やかさに綾野剛演じるどうしようもないがどこか憎めない駄目な大人・狂児の存在感が絡み付く。「元気あげます」のくだりが好きだ。大人の無神経さにイライラする聡美も、どこまでも聡美の手に余る上手な狂児のいい加減さも面白いのと同時に、年齢差という絶対に縮まらない距離感を突きつけられて妙に切ない。


何処までも狭い世界が果てしなく遠い世界に繋がっていく。
映画で描かれるのはあまりにもぶっ飛んでる大人の通過儀礼だけど、同時に誰しもが通り過ぎたそれを否応なく重ね合わせてしまうノスタルジーに満ちた空気。
個人的に合唱祭で歌った曲が出てきたのも懐かしかった。
間違いなく、成人推奨の作品だ。
tubame

tubame