ヨーク

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明けのヨークのレビュー・感想・評価

3.9
感想を書く前に一応断っておくと俺はスターウォーズは割と最近まで観たことなかったし、当然観たことなかったのだからシリーズとしての思い入れとかは皆無に等しい、いわゆるスターウォーズ素人だということをまず断っておきます。そういう者の感想だということで一つ。
俺が初めてスターウォーズを観たのはEP7が公開される直前で今このタイミングで観ないともう一生スターウォーズを観ることはないのではないかと思って自宅で4~6と1~3を観て劇場で7~8を観たのである。そんときに何が凄いと思ったかというと4~6と1~3は初見にも関わらず全部知ってたことにびっくりしましたよ俺は。特に4~6だけどストーリーの流れはもちろんのこと一つ一つのシーンもこれどっかで観たことあるなのオンパレードで如何にこのシリーズが後世に影響を与えてきたのかと如何にパロられてきたのかががよく分かりましたよ。本当に偉大なSF映画だと思います。
さて感想文の本題はEP9でありEP7から続く新新三部作の完結編である。最初に結論を書いてしまうと面白かった。7~9の中では一番面白かったんじゃないかなと思う。コアなスターウォーズファンの間では結構賛否両論になっているようだが、ぶっちゃけこれほどの人気シリーズならどんな結末にしても文句を言う奴は必ず出てくるしストーリーに関しては本作は結構無難な結末に着陸したのではないかなと思う。最高とは言い難いかもしれないが全然悪くはないと思うよ、うん。
しかし悪くはないのだがそれと同時に観劇中ずっと味のしないガムを噛み続けるような徒労感を覚えたのも事実だ。その味のしないガムというのは旧作の登場人物たちのことである。個人的にはEP7の時点でレイアやハン・ソロやチューイといった旧作のキャラたちが前に出過ぎで不満であった。彼らが魅力的なキャラクターであることは言うまでもないしファンサービスとしての面もあったのだろうが、正直新主人公のレイちゃんや、フィン、ポーにカイロ・レンといった新たな登場人物たちが食われていたことも事実だと思う。特に残念なのはフィンで、元ストームトルーパーというシリーズ中でも今までにない(俺の知る限りナンバリング作品ではなかったはず)来歴のキャラクターでそこに生まれるドラマとかめっちゃ面白そうだと思うのについぞ三部作の中でその物語が掘り下げられることはなかった。その代わりにハン・ソロやチューイやレイア、EP8ではルークやR2やC-3POが出まくるのである。そして悲しいことにレイちゃんをはじめ新世代の面々が旧作のキャラたちに匹敵するほどの魅力を持つことはなかったと思う。そして新キャラたちが薄いからまた旧作メンバーの出番が増える…というような負の連鎖を三作通してやっていたような気がするのだ。
いやまぁそこは仕方ないところもある。ルークもレイアもハン・ソロもスターウォーズシリーズどころか映画史上のレジェンドだからね。そんな偉大なキャラクターに匹敵する登場人物をそんなにポンポン生み出せるかよ、というのは分かる。しかし、それならば旧作の登場人物に頼らないような話づくりをしろよとも思うのである。そもそもEP7がEP6の100年後くらいに設定すれば旧作のキャラは全員死んでるんだから古いスターウォーズに縛られることなく好きな物語を描けたであろう。ルークの説教が欲しくなったらヨーダ辺りとセットで霊体として出てもらえばいいだけだ。同じキャラクターを引っ張り出してきて、しかも全体的な物語の流れとしても旧作と似たようなことをしてるんだから俺のようなにわか客は味のしないガムや出がらしのお茶を口にしているような気にもなるというものなのだ。
そういう意味ではEP8はまだ頑張っていたようにも思う。え、これどうすんのマジでこれでいいの? という色んな意味でのドキドキ感はあった。しかし残念ながらEP8はシナリオ自体が何かとっ散らかっていてグダグダ感は否めないのでEP9へと繋げる際にやはりEP8の方向からは転換しようということはあったのだろう。実際EP9は三部作の最後としてかなり無難にまとまっているとは思う。
しかし結局三部作をかけてやったことというのはスターウォーズというサーガにおけるスカイウォーカーの切り離し作業なのだろう。いかにしてスカイウォーカーという過去の遺産でもあり呪いでもある存在から自由になるかという物語だったのだと思う。だったら先に述べたようにEP6の100年後とかから始めろよということもあるがそこはまぁきっと大人の事情があるんだよ、やっぱレイアとかルークが出るってなったら観に行きたくなるじゃん、特に古いファンの方たちは。だったらその方が儲かるじゃん、という身も蓋もないところもあったのだとは思う。だがその大人な判断のおかげでレイちゃんやフィンやポーは割りを食ったよなぁとも思うのだ。結局はスカイウォーカーと例のあの人との因縁の物語で終わっちゃったからね。
本作のサブタイトルはthe rise of skywalkerだが俺的にはburial at skywalkerとでも言うべきものだったと思う。夜明けというよりも埋葬とでも言うべきだろう。特に本作を鑑賞済みの方ならラストシーンはburialとでも言った方がしっくりくると思うのではないだろうか。
何か全体的に文句の多い感想文になっているような気もするが、文句というよりも人気のあるシリーズ物の難しさを感じる作品だったと思う。これも先述しているが完結編としてはこれ以上ないくらいに無難な落としどころではあると思うし、ラストのレイちゃんのセリフも賛否あるようだけど俺はいいと思いますよ。ていうかあのセリフのおかげでギリギリriseというサブタイトルを受け入れられる。burialからのriseで締め、砂漠から始まって砂漠で終わる物語は美しいと思いますよ。
新キャラたちの活躍をもっと観たかったという不満はあるものの結局は最初に書いた通り面白かったです。何よりもエンドロールのスターウォーズ・メドレーを聴いてしまうともう全てオールオーケーになってしまう。古くからの本当にコアなファンにとってはどうなのか分かんないですが俺的には面白かったです。

2019 12月27日追記
旧作のキャラクターを越えられなかったとしきりに言っているが唯一例外がいたことを思い出した。その名はBB-8。あの思わず壁に投げつけて跳ね返ってきてほしくなるフォルムはたまらない。R2よりかわいいんじゃないですかね。くるくる回りながら付いてきてほしいし。BB-8のデザインは7~9の中では最高の仕事じゃないかと思う。
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