きんゐかうし卿

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明けのきんゐかうし卿のネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

 



『総決算は焼き直された総集篇』

公開から一週間遅れで劇場にて鑑賞。'77年から続く著名なスペースオペラの連作九作目にして、旧(オリジナル)三部作(エピソードⅣ~Ⅵ)、新(プリクエル)三部作(エピソードⅠ~Ⅲ)、続(シークエル)三部作(エピソードⅦ~Ⅸ)と続くシリーズ完結篇。前作『最後のジェダイ('17)』で多用されたテレパシーの遣り取りが減らされ観易かったが、つくづくこの設定が嫌いなのだと再認識した。更に前作で(ファンの間でも賛否両論が出た)或る意味、滅茶苦茶にされた物語の背景や展開、世界観等を軌道修正し、(力業気味ではあれど)何とか収めた監督の手腕に感心した。70/100点。

・ディズニー傘下になってからのシリーズの一つの兆候として、ファースト・オーダー(スピンオフ作等では帝国)側も反乱軍側も内部抗争や権力争い等が内包しており、一枚岩でいかない様が描かれており、現代風な一面で非常に佳い。

・本作で特徴的なのは、登場人物達の過去の人間関係を示唆するシーンが多い事である。“レイア・オーガナ”のC.フィッシャーは云うに及ばず、“ルーク・スカイウォーカー”のM.ハミルに“ハン・ソロ”のH.フォード迄、登場している。O.アイザック演じる“ポー・ダメロン”と腐れ縁的な繋がりを思わせる男前な“ゾーリ・ブリス”が初登場するが、演じるのはJ.J.エイブラムス組の常連K.ラッセルである。前作で登場したもののかなりの不評を買った“ローズ・ティコ”のK.M.トランはその評判からか出番が極端に少なく(“レイア・オーガナ”を演じるC.フィッシャーの実娘B.ラードの“コニックス”中尉の方が重要な役割で露出も多い)、変わってN.アッキーの“ジャナ”がこれに匹敵する役割で登場する。それにしても“フィン”のJ.ボイエガは色男でかなりモテる様だ。

・当初、製作側はレイア・オーガナ”のC.フィッシャーの出演は無いと断言した。ところがそれから半年しない内に、監督を務めていたC.トレヴォロウがクランクイン前に降板した(書いても書いても採用されない脚本に嫌気がさしたと云われているが、後任となったJ.J.エイブラムス現監督が彼の名を残したいとし、C.トレヴォロウは「共同脚本[原案]」として本作にクレジットされている)後、引き継いだJ.J.エイブラムスがC.テリオを呼び寄せると大幅に脚本を書き換え、'18年8月1日クランクインを迎えた。'19年2月15日主要カットが無事撮影終了。C.フィッシャーの出演シーンは、主に『フォースの覚醒('15)』の没シーンをポストプロダクションにて背景・ライティング等を加工し、使用したとされる。亦、スピンオフ作を除くオリジナル版シリーズ全作に参加してきた音楽を務めるJ.ウィリアムズが、自らが製作するシリーズ最終作になるであろうと発表した。

・『フォースの覚醒('15)』から始まるシークエル(続)三部作を通し、フォースが強かったり、弱かったり、感情剥き出しで心身共に未熟な“カイロ・レン”が何かと中途半端で気に入らず……はたしてシリーズにおけるこのキャラクターの役割とは何だったのだろう。逆に本作で初めて“レイ”に好感が持てた。

・前作から出ていたA.ローレンス演じる“ラーマ・デイシー”中佐は、ルーカス・フィルムによるとシリーズに登場した初めての同性愛者で、この設定はエピローグで湧く人々の中で女性とキスする短いシーンが見て取れる。初めてと云えば、ラストで“レイ”が持っていた自作と思われるライトセーバーは、シリーズ内で初めてだと思われる明るいオレンジ(黄)色であった。

・焼き直しと云えばそれ迄だが、嘗てシリーズ内で登場した自分自身と戦うシーケンスやX-ウイングを水中から引き揚げるシーン(『帝国の逆襲('80)』で“ヨーダ”が同じ事をやった時とよく似たBGMが使われている)等、往年のファンを唸らせる懐かしいシーンが多数あった。

・本作で登場したシスが遺したドロイド“D-O”──“C-3PO”以外では珍しく英語を話すが、声を当てたのは監督である。記憶(データ)がリライト(リロード・一新)される前に云う“C-3PO”の「しっかり眼に焼き附けたい」と云う科白が胸熱で、初めてシリーズが終わるのだと実感した。この“C-3PO”を演じたA.ダニエルズは、'77年の一作目から全作に出る皆勤賞だが、ミレニアム・ファルコンの砲撃主として本作で初めて「生身」の出演をはたした。

・D.リドリーの“レイ”が聴くジェダイの声は、O.ダボの“ルミナーラ・アンドゥリ”、A.エクスタインの“アソーカ・タノ”、J.ヘイルの“アイラ・セキュラ”、A.ペランの“アディ・ガリア”、F.プリンゼJr.の“ケイナン・ジャラス”、H.クリステンセンの“アナキン・スカイウォーカー”、S.L.ジャクソンの“メイス・ウィンドゥ”、E.マクレガーの“オビ=ワン・ケノービ(青年期)”、A.ギネスの老いた“オビ=ワン・ケノービ”、L.ニーソンの“クワイ=ガン・ジン”、F.オズの“ヨーダ”である。

・“カイロ・レン”が暗黒面から翻り、“ベン・ソロ”へと戻った時(具体的には“ケフ・ビァ”でD.リドリーの“レイ”と戦った後)以降、演じるA.ドライバーの顔から『フォースの覚醒('15)』で附けられた傷痕が消えている。恐らく視覚的にライトサイドへ戻ったと判らせる為の演出であろう。

・ジェダイのトレーニングシーンでは、スピンオフ作『ローグ・ワン('16)』以来となる“レイア・オーガナ”のC.フィッシャーと“ルーク・スカイウォーカー”のM.ハミルの若かりしご尊顔が窺える。このシーン、恐らく想像通りの過程(ポストプロダクション)を経て作られたと思うので、詳しい解説は省略する。

・製作時の仮題は"Star Wars: Black Diamond"とされていたが、'18年6月に"trIXie"と云う記号に変更された。

・続(シークエル)三部作(エピソードⅦ~Ⅸ)を振り返り、新キャラとして、“ベイダー”卿や“パルパティーン”皇帝、“ダース・モール”、“グリーヴァス”将軍の様なの強烈で魅力的なヒールの新キャラが欲しかった。そして『ジェダイの帰還('83)』でM.ハミルの“ルーク・スカイウォーカー ”が使っていた緑のライトセーバーはどこに行ってしまったのか一切の言及が無かった。

・鑑賞日:2019年12月27日(金)