HicK

ファンタスティック・フォーのHicKのレビュー・感想・評価

3.0
《大不評のリブート。でもダサさが好き》

【最低のマーベル作品?】
マーベル大作映画の中ではたぶん最も評価が低い作品。それまでのファミリーフレンドリーさから「ダークナイト」「X-MEN」シリーズのようなシリアス路線に舵を切ったリブート作。そのせいか、キャラクターたちが能力を手に入れるまでが長く淡々としている事が大きな原因かもしれない。ただ、評価に反して青春劇自体は好きだった。

【青春劇】
オタクなリード、嫉妬と卑屈のビクター、父コンプレックスのジョニーなどキワモノ揃い。ジメジメ感が好き(笑)。オタク系が団結して装置を作り上げるシーンも湿度が高く熱い。ただ、もっと一人一人の存在意義というか必要性は欲しい。ちなみにジョニーの車にはマリオのファイヤーフラワーのキーホルダーがあるという小ネタも好き。オタク感。

【俳優陣は良かった!】
結構よかった。リード役のマイルズ・テラーのオタク感も好きだが、脱走後の別人のような頼もしさのギャップが好きだった。顔つきが違っていた。ジョニー役のマイケル・B・ジョーダンは前作のクリス・エヴァンス同様にカッコいい。どこか大人未満の可愛らしさもある。スーザン役のケイト・マーラはジェシカ・アルバのような"商品感"は無く、ミステリアスなオタク感が好印象。ベン役のジェイミー・ベールも好きだったのでもっと見たかった。

【ダサい演出】
影を強調した暗い色彩の演出からサスペンス・ホラー感がある。青春劇と相まって映画「ソーシャルネットワーク」に近いものを感じる。ただ、やっぱり地に足の着いたトーンを目指そうとすると今作のセリフやデザインのダサさが際立ってしまう。デザインに関しては現実味のあるテイストに仕上げたのも分かるが、特にDr.ドゥームの顔面はかっこ悪すぎる。たぶん「現実的=ダサい」という関係性が監督と脚本家の中にはあるのかもしれない。脚本の一人はサイモン・キンバーグだが、彼の脚本は地に足をつけようとするとコケやすようにも感じる。

【展開の無駄さ】
フリはあるものの拾わない。例えば、中盤で逃走したリードは「必ず助けに戻る」と言いながらも、結果的に捕まって戻ってくる。逃げ出した意味はあるのか?その後、見捨ててしまった事に対して目立った罪滅ぼしも無く…。この2幕目の展開には制作途中で予算を削減された影響もあるらしく、脚本上はアクションを用意していたが、撮れなくなったため再撮影で繋ぎ合わせたという。再撮のスーザンのウィッグがあからさまに違っていた。そして、クライマックスのビクターも何がしたいのか。勝った要因も今ひとつ。全員で力を合わせると言いながら、そんなに力を合わせてない。など残念な点が多い。

【1・2幕を昇華させるものが無い】
結局、能力を得るまであんなに長く見させられたのに、何もラストで活かされていない。アクション作品に限らず、起承転結の「起」(もしくは承まで)が長い作品でも、その分ラストで一気に暴れ出しカタルシスが待っているものは好きだが、今作には第1幕2幕で積み上げてきた物の昇華が無く、ただ起が長い作品だった。

【総括】
青春劇にサスペンス・ホラー要素を加え、地に足の着いたトーンの魅力はあるものの、デザイン、セリフ、展開の相性が悪い。序盤が長い構成も最後で活かすことなく、加速力の無い物語になってしまった気がする。

でも、このダサさ、少しだけ好きかもしれない(笑)。絶対に少数派だが。
HicK

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