YasujiOshiba

ラスト・デイズ・オン・アースのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

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なんだかスコットランドを舞台にしたピランデッロ劇を見ているような感覚。ミステリーだと思って見ていると、メタミステリーだったみたいな感覚。SFだと思って見はじめると「あれっ?」となって、やがてやっぱりSFだったんだと安心するのだけど、もう一度「あれっ?」となる。

英語のレビューを見ていると、SFファンのなかには「夢オチ」だと怒っている人もいるけれど、そんなに単純な話なのかね。映画も演劇も小説も音楽も、時間に関わる芸術というのは、極論させてもらえば、ぼくらを最後まで引っ張ってくれるかどうかが全て。この作品にはそれがある。

タイトルの「地球での最後の日々」というのは、誰がつけたのか知らないけれど、疑似餌みたいなものだよね。ぼくもそうだけど、とりあえずSFファンは食いついて見たくなる。でも原題は Beyond で実に意味深。とりあえず前置詞と考えて、何かの「向こう」なのかもしれないし、副詞だとすれば時間的空間的に「超えてゆく」ような運動を連想させるし、名詞だとすれば「あの世」ということでもあるわけ。

実際にこの作品はそのどの意味も少しずつ当てはまるところが面白い。なによりも、時間を行き来するナラティブのなかでコール役のリチャード・J・ダナムと、マヤを演じたジリアン・マクレガーのふたりの芸達者ぶりが心地よい。感情のレイヤーを何層にも重ねたところから、なんともいえないダイナミックなエモーションが立ちあがってくるのだ。

忘れてはならないのはスーパーの店員マイケルをやったポール・ブラニガンの存在感のない存在感。映画的でなさそうにみえて、すごく映画的なリアリティの出し方。物語のけっこう核心的な人物なんだよね。

この作品、2014年のロンドンSF映画祭で上映できるかどうか議論になったみたい。結果的には上映されたみたいだし、ぼくもSFとしてありだと思うけど、さてみなさんは、どうでしょうか?
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