くわまんG

5時から7時の恋人カンケイのくわまんGのレビュー・感想・評価

5時から7時の恋人カンケイ(2014年製作の映画)
4.0
あらすじ:あの時は助けてくれてありがとう。そう振り返ることができるなら、いい恋愛だったのかも。

売れない作家の卵と富豪の人妻が、不倫で心の隙間を埋め合っていたけど、ついに逢瀬では我慢できなくなり…というお話。

厳しい現実を生きていると心が疲れ荒むから、人は何かに癒やしを求めて、一時的な現実逃避を試みる。酒や食や旅行などに。中でもとりわけ心を麻痺させるのは恋愛で、という訳は相手がそばにいる間は何もかも忘れられるから。

だから恋愛はいつでも始まる。既婚者同士でも始まる。むしろその方が、配偶者がケアしてくれない無情(あるいはそう思い込んでいるだけ)や背徳感が相乗効果を生むせいでより一層燃えがちなので、自然鎮火せずに互いの家庭を焼き払うことだってある。

ところで不倫には、擁護はできなくとも同情はできるケースがある。法はそれを許さないけど、心はどうか。そのとき、不倫相手が癒やしてくれなければ、配偶者の心が破綻していたと知ってなお、絶対に許さないと言い続けられるか。

ヴァレリーの心はここに至ったから、誓いを思い出せたのかもしれない。アリエルもブライアンも同様に、最終的に相手の幸せを優先したはず。こういう状況は、現実でも虚構でも、後々必ずハッピーエンドに繋がると決まっている。

始まり、盛り上がり、終わり、振り返り、そして再会。その時その時の、各登場人物の心の揺れ動きを端的に捉えた、現実に還元しやすい良作。相手のことを思い出したときに、怒りや悲しみではなく、謝罪や感謝の念しか湧かないのなら、その過去は精算済みということだし、逆もまた然り。

なんてことない独白で迎えるエンディングも、アントン・イェルチンの細やかな声色のおかげで美しかった。