あらすじ:フーテンだからこそ、庶民の辛さが分かるってもんよ。
ついに所帯を持つかと思いきややっぱりうまくいかなくて、また旅に出たらそこにマドンナがいたもんだから…というお話。
シリーズ初、昭和風俗の闇に触れた作品。故に一部重たいけれど、反面深い共感を呼ぶ。
自分のようなヤクザ者と一緒になったら迷惑かけるからと、恋心に蓋して孤独を貫いていたことが発覚した寅さん。人様に迷惑をかけぬよう、過酷な流浪生活を送っていたのだ。切ない。
そんな寅さんだからこそ、言葉を失った清太郎の苦痛をキャッチできた。義侠心がこめられたいつもの口上に、胸が熱くなった。
「辛いことがあったら俺のことを思い出して、下には下がいるから私は安心と、前を向いて下さい。」という重たい別れの挨拶も、ブラウン管越しの「自分は平気だから気にせず幸せに暮らせ。」という気遣いも、届くことはない。
それでいい。それでいいと言い聞かせて、今日もまた旅に出る。通りすがりの人たちを、束の間の馬鹿笑いで癒やす。そのうち自身の傷心も癒える。それでいい。
という感じで、お気楽寅さんではなく、ガッツリ自己犠牲寅さんな一本。好き嫌い別れそうだけど、これはこれで好き。