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ラ・ラ・ランドのriyouのネタバレレビュー・内容・結末

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

なぜふたりは最後に微笑み合えたのか。それはふたりが自分たちの状況を肯定できたからだ。なぜ肯定できたか。それはあの夢の解釈に依る。ふたりがあの夢を「ありえたかもしれないもの」として見たなら、現状を肯定できないはずだ。それは過去を遡っての後悔(あのときああしていれば違ったかもしれない……)に繋がってしまう。そうではなく、ふたりはあの夢を「ありえなかったもの」として見たのだ。こうとしかならなかった。いつだってそうだ。あの夢は”現に”はないが”実に”はある。潜在的にこの世界に織り込まれている。可能態としてではなく潜勢態としてある。そうふたりは気付いたから、後悔はなく微笑み合えたのだ。

はじめジャズの即興性と演劇の周到性は対立的に現れるが、それらは同様にたゆまぬ反復とその差異に依る美だとわかり両者は和解していく。

ミアがお店で流れるジャズに気付きセバスチャンの元へ走るシーンには、恋愛の結晶化作用がよく表れていた。これまでBGMに過ぎなかった音が聴こえるんだ。美しく。これまで背景に過ぎなかった景色が前面に現れてくる。世界が驚くほど色鮮やかに感じられる。あの素晴らしい体験である。
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