次郎

ラ・ラ・ランドの次郎のレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
3.3
傑作とは思わないが「セッション」の時の不快感はないというか、非常に微妙。とりあえず冒頭から夜の公園まではまあ良いんだけど、そこから先は何だったっけ…といった感じ。

全般的に夢を追いかける云々といったテーマよりも、ジャズや映画に限らず衣装や車といったあらゆるものに懐古的記号と引用を散りばめ、恋する二人は世界の中心!なムードをスポットライトで殊更煽り右に左にカメラを動かして作り上げたイメージ映像の集合体というのが印象だった。

それにしても「フリージャズが好き」といいながら敬愛するジャズ演奏家としてバップ時代のばかり挙げる上、人種の問題については一切触れないというのは何なんだろう。フリーにしろバップにしろ、それらはミュージカル的な定型的演奏や集団ダンスに嫌気がさして始まった音楽なので本質的に食い合わせられるものじゃないと思うんだけど、まぁ、その辺りはジャズ警察ホイホイということで御愛嬌。

それよりも自分がハマれなかったのが、本作に終始漂うノスタルジアとナルシズム。恋も夢もエゴイスティックに自分の過去を美化し肯定できなきゃ成功しないよ、ということなんでしょうか。誰かが「ミュージカルというよりフラッシュモブ」と言ってたのにはすっごく同意で、ラストにおける妄想劇の過剰な反復/映画的説明にも全く感動できなかった。というか全てはあのラストに奉仕するための物語なのであり、だからこそモヤっとしているのかもしれない。

とりあえずスマホ持ってるのに連絡先を一切交換しないふたりを見ていて、チャゼル監督は現代ではなく60年代以前を舞台とした方が絶対自然に見られると思った。
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