ShinMakita

マネー・ショート 華麗なる大逆転のShinMakitaのレビュー・感想・評価

3.0

その昔。ある銀行のあるオッサンが、いいことを思いつきました。それは、銀行が抱えている住宅ローン案件を証券化した商品として投資家に売るというもの。家を買った人は毎月ローンを払うのでそれが投資家への配当になるし、家を担保にしているから万一ローン返済が滞っても銀行は損をしません。この証券を売れば売るほど手数料が入るので、銀行はこぞってこの住宅ローン債権を売りまくりました。これをモーゲージ債=MBSというんだそうです。



で、時は2000年代の半ば。MBSは格付けトリプルAの優良商品として金融市場で取引されていました。ところがある時、小さなファンド会社を経営する変人社長マイケル・バーリが、このMBSでデフォルトが多くなっていることに気づきます。デフォルトっていうのは、家を買った人がローンを返済できなくなってしまった状態、すなわち債務不履行です。今はまだ住宅ローンって固定金利が主流だけど、変動金利が導入されたら、ローン利子が上がってますますデフォルトが増えるじゃねーか!そうなったら、MBSは紙クズになってしまうじゃん!…そこでマイケルは、MBSの価値が下落しても損をしない方法を思いつきます。それはクレジット・デフォルト・スワップ=CDSというやり方。MBSに保険をかけるという手で、MBSがゴミになったら多額の保険金が支払われるシステムです。ただこれ、毎年の保険掛金がバカになりません。このままMBS価値が高いまんま続けば、マイケルは数年の保険料だけで破産してしまうのです。まさに危険な賭けでしたが…


いくつもの銀行を回り、多額のCDSを契約したマイケル。ドイツ銀行のジャレドは、マイケルの読みが当たると考え、銀行屋として儲ける方法を考えます。彼は、証券会社ベアー傘下のファンドマネージャー、マーク・バウムに接近、CDSを契約しないかと持ちかけます。マークは徹底的な調査を開始し、デフォルトのメッカ(笑)、フロリダに出向き、サブプライムローンの実態を目の当たりにします。MBSをバンバン売りたい銀行は、移民だろうがチンピラだろうが、ロクに収入もない低所得者〈これぞプライム(一般顧客)よりもサブ(下層)〉にローンを組みまくっていたのです。MBSの破綻を確信したマークは、マイケル同様CDSを買いまくるのでした。

同じ頃、素人ファンドの青年チャーリーとジェレミーのコンビは、偶然にもジャレドのCDS販売のネタを手に入れます。二人は、CDSで一発当てようと、引退した証券トレーダー・ベンを引っ張りだし、教えを請うのでした。

格付け会社も、証取委も、証券会社も、そして銀行も、誰もがMBSを安全だと考えている中、マイケルもマークもチャーリー&ジェレミーも、バカでイカレた三組に見えました。しかし現実は……



「マネー・ショート 華麗なる大逆転」をさっき見てきました。これ、ある程度の知識を要する映画です。途中退場&イビキの合唱がこんな多かった作品も珍しいです。初日なのに!

私の経済知識も極浅なので、上のあらすじに間違いあったら教えてくださいな(笑)


本来の空売りとは意味が違いますが、CDS購入というのは、買ったもの(MBS)の価値が下がれば得をするってイミではまぁ、空売りと捉えていいでしょう。ショートって空売りのことですからね。ただ、華麗なる…って副題はどうかなぁ。終わりのシリアスさからしても、カラッとしたカタルシスのある映画じゃないんですよ。コメディの体裁はとってるけど、かなりどんより暗くなる作品かも知れません。銀行のゲスっぷりがとにかく腹立つんですよね。

プラピはゲストとして、基本的に主役はクリスチャン・ベールとスティーブ・カレル。ジャレド役のライアン・ゴスリングはコメディリリーフでしたね。特にカレルの神経症演技が最高でした。

アカデミー脚色賞作品として観る価値はあるし、キャラたちに入り込めれば全く退屈しないので一応オススメ。でも、お金に興味がなければ、ただ眠いだけかも知れません。
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